見もの・読みもの日記

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大結局《人生幾度秋涼》

2005-02-09 23:51:19 | 見たもの(Webサイト・TV)
○連続電視劇 『人生幾度秋涼』31集

 春節快楽! 今日は旧正月の元旦なので中国ネタで。

 昨年の秋から見ていたこのドラマが、先週の日曜日に終わった。盛り上がって、劇的な最終回だった。主人公の富嗣隆を演ずる張鉄林、敢えて、老醜をさらし、不様な最期を受け入れる”男人劇”的美学がカッコよすぎである。

 清朝帝室の後裔にして、家宝の古詩帖と引き換えに市長の座を手に入れた富三爺だったが、ひそかに古詩帖を奪い返したことが洋人の怒りを招き、失脚する。さらに家令の馬師爺に妻を寝取られ、全財産を奪われて、獄中に追いやられる。昔の恋人の歌うレコード1枚だけを隠し持って。

 しかし、同じ獄中の周彝貴から、取り戻した古詩帖が、我が娘・秀儿と周彝貴の息子・子貴によって保たれていると聞き、彼は満足する。刑場に引き出された富三爺を奪回すべく集まった牡丹班の人々の、不穏な動きを察知した彼は、「芸を後代に留めることこそ君たちの使命だ」と告げて、思い止まらせ、莞爾として銃弾に倒れる。もうひとりの主人公、周彝貴(李誠儒)が、悲憤と絶望にかられた目で銃口を見つめ返すところでドラマは終わる。

 そう、この作品のテーマは「人は死す、しかし芸は留まる」なのだ。芸は留まらなければならない。いや、留めなければならない。わずかな時間を生きる我々は、有形無形にかかわらず、いまここにある芸を守り、後代に伝えていかなければならない。そのように語っていると思う。

 ドラマのタイトルは蘇東坡の「西江月」という詩(詞)に拠っているということを知った。”西江月”(せいこうげつ)というのは詞のスタイルのひとつらしい(勉強になるなあ)。以下、末句の1字が表示ができないのをご容赦(盞はウソ)。蘇東坡って、日本人には唐詩ほどなじみがないけど、たぶん中国人の心性には、いちばんピタリとくる国民詩人なのよね。

 世事一場大夢,人生幾度秋涼。夜來風葉已鳴廊,看取眉頭鬢上。
 酒賤常愁客少,月明多被雲妨。中秋誰與共孤光,把盞淒然北望。

 余談。”皇阿瑪”張鉄林は、絵も描くし歌も歌う、多芸な俳優さんだが、最近、Jinan大学の芸術学院長(芸術学部長)に就任したという記事には、さすがにびっくりした。近頃、中国の大学は、こんな人事もアリか。
http://ent.sina.com.cn/s/m/2005-01-18/1023633569.html

■《人生幾度秋涼》資料集(新浪網)(中国語)
http://ent.sina.com.cn/v/f/rsjdql/
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6 コメント

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人生幾度秋涼 (てぃんぷぅとぉん)
2012-12-01 14:54:37
 こんにちは。
私は浅田次郎の「蒼穹の昴」と映画「ラストエンペラー」
に魅入られたのをきっかけに、清朝・民国時代の風俗に惹かれて時々北京を訪れる旅行者です。(もっとも今の北京に京味を探そうなんてどだい無理な相談ですが。)
 この作品に(連続ドラマ?)とても興味があるのですが、
日本語の字幕付きでDVDは手に入らないのでしょうか? 中国語のDVDはあるようですが、旅行会話がやっとの中国語能力なのでオリジナルでは鑑賞不能です。
情報をご存じでしたらご教示いただければ幸いです。
てぃんぷぅとぉん様 (jchz)
2012-12-01 19:23:58
こんにちは。なつかしい記事にコメントありがとうございます。私も浅田次郎の小説をきっかけに清末・民国期にはまりました。この連続ドラマは大陸製ですが、とても好きな作品です。US版のDVDは、今でも入手できるようですが、残念ながら、英語字幕や日本語字幕は付いていないみたいですね。

でも中国ドラマは、ほぼ必ず中国語字幕が付いているので、入門程度の語学力があれば、なんとか理解可能だと思いますよ。私も全て理解できているわけではないので、かなり想像で補いながら、おおらかな気持ちで楽しんでいます。

ご存知かもしれませんが、以下のサイトで無料視聴できるんですね。まずは雰囲気を味わいながら、流し見してみてはいかがでしょう。
http://www.youku.com/show_page/id_zcbffcede962411de83b1.html

あまりお役に立てなくてごめんなさい。
ありがとうございます。 (ていんぷうとおん)
2012-12-04 17:04:22
 さっそく第1話見ました。ありがとうございます。
京味の横溢に震えるほど感激しました。一昔前の中国ドラマと違ってとても緻密に作られていると感じました。
中国映画らしくない自然な演技もとてもよいですね。
 残念ながら自分の拙い語学力では話を理解するのは無理があります。字幕があるとはいえ、ぱっぱ変わるのでとても追うのは無理です。
(ゆっくりでもやはり無理でしょうが)
何となく理解できたのは、尚珍閣に国民党の権力を笠にきた将校が偽物だとか傷物だとかいちゃもんをつけているようなシーン。最後のシーンは血だらけの腕で金を脅し取ろうとして、尚珍閣の兄貴に偽物と見破られて(それとも本当に人の指を齧って畏れ入らせた?)
ちゃんと理解できればどれだけ楽しめるでしょう。
ネットで調べると本物の骨董品が撮影に使用されているとか。明清の陶磁器のレプリカ集めを趣味とする者には垂涎のドラマです。
 ますます日本語字幕のDVDが見たくなりました。
もっと中国ドラマを! (jchz)
2012-12-04 23:48:30
>尚珍閣に国民党の権力を笠にきた将校が偽物だとか傷物だとかいちゃもんをつけているようなシーン

そうです。お前の店が、明の画家・仇英の画だと言って売ったものが「彷製」だったと文句をつけにきていました。尚珍閣の掌櫃的(主人)は、自分の目利きの誤りを認め、店を弟子たちに譲り、引退して故郷に帰っていきました。目先の利益に目がくらむと判断を誤る、という戒めの言葉を残して。

>最後のシーンは血だらけの腕で金を脅し取ろうとして、尚珍閣の兄貴に偽物と見破られて

ですね。詐欺犯は、金を出せばおとなしく帰るが、警察を呼べば、お前たちが殺人を命じたという、とか無茶な脅しをしてたと思いますが、こんな茶番は《江湖異聞録》(?)という本に載っているぞ、と周掌櫃(尚珍閣の新しい主人)にネタばらしをされてました。

泣き崩れた詐欺犯が、病気の老母のためにお金が必要だったというのを聞いて、余掌櫃(別の骨董店の人相の悪い主人)からだましとったお金は、黙って持ち去らせましたね。

このあとも非常に複雑な人間模様と人情劇が描かれて面白いんですよ~。

NHKやケーブルテレビも、韓流ばかりでなく、もっと中国ドラマを放送してくれたらいいのに、と思いますが、(特に近代劇の場合)日本の描かれ方に問題があって難しいんでしょうか。残念に思います。
「人生幾度秋凉」について (てぃんぷぅとぉん)
2023-07-07 09:57:17
 こんにちは
以前中国ドラマ「人生幾度秋凉」についてコメントさせていただいた者です。
その節は拙いコメントに丁寧なご返信を頂き有難うございました。
月日の経つのは速いものでもう10年も前ですね。
 
今、公開講座で中国語を学び直ししています。
講師の先生曰く、本物に触れることが大切で、中国ドラマを中国語字幕で見るとよいと勧められ、あらためてこのドラマを思い出しましたが、講師に訊くと、このドラマは知らないとのこと。

2005年2月の記事では「昨年の秋から見ていたこのドラマが先週終わった」と書かれています。
当時どの放送局で放映したか覚えておられますか?
日本で放送されたものなら、放送局名を知りたいのです。また、日本語字幕はついていましたか?
 百度百科で検索すると、このドラマは2003年電視劇とあるので、2004年に日本で放送となると、ちょっとタイミングが早すぎるような気もします。あるいは当時中国のTVでご覧になっていたのかもしれません。
もしそうなら中国のどこの放送局でしょうか?
教えて頂ければ助かります。

以前教えて頂いたので、YouTubeでは見られるのですが、日本のDVDプレーヤーで再生できる中国語字幕の入ったDVDソフトを今探しているところです。
Unknown (jchz)
2023-07-10 20:42:10
こんにちは!
なつかしい記事にコメントをつけていただき、ありがとうございます。

2005年当時、私はスカパーのオプションに入っていたCCTV大富を契約していました。いまは「大富チャンネル」というみたいです。
https://www.skyperfectv.co.jp/plan/channel/premium/1056801

中国中央電視台CCTVが、海外在住の中国人向けに運営しているチャンネルなので、人気番組は、だいたい本国と同時期に放映されていました。
海外ドラマはネットで見るのが当たり前になった今では、想像ができないような話ですけど…。

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