○京都国立博物館 特別展覧会/開館110年記念『美のかけはし-名品が語る京博の歴史-』(承前)
http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html
前稿で書き漏らした名品について、いくつか補足。大徳寺大仙院寄託の狩野元信『四季花鳥図』は、障壁画を改装したもの。「圧巻は近接拡大してとらえられた松と滝」という解説パネルを読んで、ほお、と思った。ほんとだ。いちばん左の画面に、垂直に流れ下る滝が描かれている。手前の松の枝には、青と白のツートンカラーの小鳥が3羽、頭を下にして滝壺を覗き込む姿態が、水流の縦の動きを強調している。あたりに立ち込める水蒸気。ベースは水墨画なのに、花鳥の一部に華やかな濃彩を用いていて、不思議な画面だと思っていたのが、急に現実味を帯びる。「涼」を感じさせる画面である。
第1室にあった金戒光明寺寄託の『地獄極楽図屏風』は珍しかった。2曲1双の正方形に近い空間のうち、上方を占めるのが極楽である。極楽は蓮池に臨んでおり、蓮池の手前には「堤」がある。堤の外側には渺渺たる暗い海が広がり、怪しい生物が波間に飛び跳ねている。海を隔てて、画面右下の陸地は現世のようだ。極楽を船出した救済の舟(ただし、いかにも小さい)が通っている。そして、現世とは山で隔てられた、画面左下には地獄が描かれている。こういう空間表現は、あまり例を見たことがなくて、印象的だった。
ところで、上記の2作品は、どちらも寄託品である。京都国立博物館の場合、寄託品が多いことが、非常に特徴的なのだという。
それでは、寄託以外のコレクションは、どのように増えていくかというと、主な方法は3つだそうだ。購入、寄贈、そして管理換(かんりがえ)である。管理換というのは、文化庁が購入品を各国立博物館に移管することをいう。この方式によって、国立博物館には、通常経費で購入できないような作品が加わってきた。しかし、2001年の法人化以降、この適用はなくなってしまったという。
ええー。その予算はどこに行ってしまったのだろう? 博物館の当初予算(交付金)が増えたのだろうか? しかし、「京都国立博物館だより」によれば、博物館が自己収入として確保すべき金額は増えており、観覧料の引き上げを余儀なくされているという。せちがらいなあ。
そうなると、たよるべきは、篤志家からの寄贈だろうか。戦前の財閥はいろいろ悪いこともしたが、文化財の国外流出を食い止めてくれたという点では感謝すべきところもある。今般のIT長者たちも、自家用ジェットや高級マンションを買うのを止めて、文化財を買ってくれないかなあ。米国のプライスさんみたいに。
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前稿で書き漏らした名品について、いくつか補足。大徳寺大仙院寄託の狩野元信『四季花鳥図』は、障壁画を改装したもの。「圧巻は近接拡大してとらえられた松と滝」という解説パネルを読んで、ほお、と思った。ほんとだ。いちばん左の画面に、垂直に流れ下る滝が描かれている。手前の松の枝には、青と白のツートンカラーの小鳥が3羽、頭を下にして滝壺を覗き込む姿態が、水流の縦の動きを強調している。あたりに立ち込める水蒸気。ベースは水墨画なのに、花鳥の一部に華やかな濃彩を用いていて、不思議な画面だと思っていたのが、急に現実味を帯びる。「涼」を感じさせる画面である。
第1室にあった金戒光明寺寄託の『地獄極楽図屏風』は珍しかった。2曲1双の正方形に近い空間のうち、上方を占めるのが極楽である。極楽は蓮池に臨んでおり、蓮池の手前には「堤」がある。堤の外側には渺渺たる暗い海が広がり、怪しい生物が波間に飛び跳ねている。海を隔てて、画面右下の陸地は現世のようだ。極楽を船出した救済の舟(ただし、いかにも小さい)が通っている。そして、現世とは山で隔てられた、画面左下には地獄が描かれている。こういう空間表現は、あまり例を見たことがなくて、印象的だった。
ところで、上記の2作品は、どちらも寄託品である。京都国立博物館の場合、寄託品が多いことが、非常に特徴的なのだという。
それでは、寄託以外のコレクションは、どのように増えていくかというと、主な方法は3つだそうだ。購入、寄贈、そして管理換(かんりがえ)である。管理換というのは、文化庁が購入品を各国立博物館に移管することをいう。この方式によって、国立博物館には、通常経費で購入できないような作品が加わってきた。しかし、2001年の法人化以降、この適用はなくなってしまったという。
ええー。その予算はどこに行ってしまったのだろう? 博物館の当初予算(交付金)が増えたのだろうか? しかし、「京都国立博物館だより」によれば、博物館が自己収入として確保すべき金額は増えており、観覧料の引き上げを余儀なくされているという。せちがらいなあ。
そうなると、たよるべきは、篤志家からの寄贈だろうか。戦前の財閥はいろいろ悪いこともしたが、文化財の国外流出を食い止めてくれたという点では感謝すべきところもある。今般のIT長者たちも、自家用ジェットや高級マンションを買うのを止めて、文化財を買ってくれないかなあ。米国のプライスさんみたいに。