見もの・読みもの日記

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ひとりで老いる/老後がこわい(香山リカ)

2006-08-03 23:50:54 | 読んだもの(書籍)
○香山リカ『老後がこわい』(講談社現代新書) 講談社 2006.7

 著者の雑誌エッセイや対談は読んできたが、本になったものを読むのは初めてだと思う。私は著者と同じ1960年生まれである。同い年の作家や芸能人というのは、なんとなく気になるものだ。だから私も、著者が活躍を始めた頃からなんとなく気になっていた。抜群のスタイル。眼鏡の似合う知的美人で、サブカル系に理解もあり、グルメリポーターを引き受けるかと思えば、愛国心をめぐって硬派な発言も辞さない。おまけに名前が「リカちゃん」だなんて。所詮、人間の生まれは不平等と言いながら、うらやましい限りである。

 と思っていたが、いつのまにか、著者も40代の半ばを超えてしまった。本書によれば、シングル生活を続けているらしい。うーむ。こんな美人が、なぜ?

 本書は、著者が自分の体験と内面分析を踏まえながら、「シングル生活」の人々(女性に限らず)が、老後に対して抱える不安を論じたものである。私は、いわゆる「負け犬」(30 代以上、未婚、子ナシ)のひとりであるが、本書には共感できるところもあり、できないところもあった。

 たとえば、「親の死をどう乗り越えるか」という問題は、仲良し親子(特に母と娘)にとっては、痛切な大問題であるらしい。著者だけではなく、小説家の林真理子や評論家の俵萌子も同じ心情を告白しているという。だが、薄情なようだが、こういう不安は私には無い。それから「ペットの死」の恐れもない。

 むしろ他人事と思えなかったのは、「部屋が汚い」「片づけられない」悩みを抱える女性たち(笑)。これに対して、著者は「外注してしまえばいい」と一刀両断する。「その人たちはプロだから、どんなに汚い部屋でも驚いたり説教したりはしません」。これは勉強になった。

 たとえ業者に頼み忘れて、ポックリ死んでしまうことがあっても大丈夫。実際に著者は、ひとり暮らしで亡くなった女性の知人の部屋を片づけにいったことが何度かあるという。そういうとき、人は「何とかしてあげたい」と思うもので、誰かが誰かを誘い、必ず何人かが集まる。そして、片付けが終わって「故人も喜んでいるに違いない。私も人の役に立てた」と思うことは、その人の自尊心の回復に役立つ。だから、貴方が「片づけられない女」であるなら、そのことをくよくよ悩まなくても、家族や友人たちに「人の役に立つ機会」を残しておいてあげてもいいのではないか。人生最後の贈り物として。なるほど。こう考えると、ずいぶん気が楽である。
コメント
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