見もの・読みもの日記

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若冲の動植綵絵 ・第3期/三の丸尚蔵館

2006-06-03 22:09:11 | 行ったもの(美術館・見仏)
○三の丸尚蔵館 第40回展『花鳥-愛でる心、彩る技<若冲を中心に>』

http://www.kunaicho.go.jp/11/d11-05-06.html

 第2期が駆け込み観覧になってしまったので、第3期は余裕を持って、初日の朝から出かけた。この判断は大正解。今期のラインナップは、ものすごい充実である。若冲ファンならずとも、ぜひお見逃しなく、と言いたい。

 今期の『動植綵絵』はどれもいい。『梅花小禽図』は、梅花のつぼみの描き方が面白い。白いベタ塗りの丸と、輪郭を抜いただけで中を塗らない丸が混じっている。後者は、別に手抜きをしたわけではあるまいが、花芯を表す黄色い点とあいまって、輝いているように見え、画面全体が軽やかである。

 『秋塘群雀図』。スズメが群がっているのは何の穂だろう?と首をひねっていたら、別のお客さんの「粟(あわ)よね、粟」という声が聞こえた。よく見ると、スズメって意外と凶悪な表情をしている。画面下部の、地面に下りたスズメに注目すると、カラスコ(楽天のマスコット)みたいな目つきのヤツもいる。ミヤコワスレの花もきれいだなあ。

 そして、やっぱり今月らしいのは『紫陽花双鶏図』。いまさら何を語ろうかという名品だが、メンドリのくちばしの、細心な色の塗り分け方に、あらためて感心した。

 『老松鸚鵡図』は、可愛いのだけど「ちょっと変」な作品。オウムのとまっている松の幹が、けっこうグロテスクであることを発見した。画面の下部に描き込まれた、動きのある斜線は水の流れ(滝?)なのかなあ。

 『芦鵞図』は、大きなガチョウを1羽だけ描いたもの。単調で面白くないと思っていたが、周囲の風景が、全て美しい薄墨で描かれていることに初めて気づいた。この対比が味わいどころなのだろう。

 『蓮池遊魚図』。これは好きだなあ。水の表にあるはずの蓮花と、水の中を泳ぐサカナが縦方向の画面に共存するという、ありえない光景なんだけどね。韓国の民画に似ているんじゃないか、とふと思った。よく見ると、いちばん下のサカナだけ体色や胸ビレのかたちが違う。異なる種類なのか、雄雌の差なのかは不明だが、若冲って、こういう仕掛けをしたがるのよねえ。『秋塘群雀図』に1羽だけ混じった白子(アルビノ)のスズメとか。

 さて、おもむろに会場の初めに戻る。今期は、なんとなく会場全体に格調があるぞ、と感じたが、それもそのはず、中国絵画の特集なのだ。元代(14世紀)の作品が4点! 伝・李安忠の『竹粟に鶉雀図』は、何の解説もなく展示されているが、一目見れば、あっ、若冲の『秋塘群雀図』の元絵はこれだったのか、ということが明白である。
 
 伝・銭選の『百鳥図』は、いかにも明代絵画らしい楽しさに満ちている。艶っぽい芸妓のような鳳凰は、ピンクの頬に切れ長の目。くちばしの上下を、赤と緑に塗り分けたところも、(日本では江戸時代に)こういう化粧法が流行ったんじゃなかったっけ? 若冲の『老松白鳳図』(第4期に展示予定)を思い出す人も多いと思う。

 また、沈南蘋の『餐香宿艶図巻』は、清代らしい堅実な写実描写の図巻。というわけで、元・明・清の三代の絵画を堪能することができる。日本画ファンのみならず、中国絵画ファンも、ぜひぜひ今期はお見逃しなく。
コメント (3)
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