見もの・読みもの日記

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唐の鏡・女性好みの美/泉屋博古館分館

2006-06-26 22:20:40 | 行ったもの(美術館・見仏)
○泉屋博古館分館 特別展『唐の鏡』

http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

 泉屋博古館東京分館の存在を知ったのは、ごく最近のこと。実際に訪ねるのは、今回が初めてである。南北線の六本木一丁目で下りると、ガラスと鉄骨をふんだんに使った高層ビルがそびえ立つ。その近未来的な風景の足元で、龍や鳳凰を刻んだ「唐の鏡」の展示会が行われているというのは、なんともミスマッチでおもしろい。

 展示品は、ストイックに唐代の鏡約80点「だけ」である。ふだん博物館で見る文物の中に銅鏡が混じっていても、それほど注目したことはないので、果たして面白いのかどうか不安だったが、意外と面白かった。

 鏡の文様モチーフでは「四神」や「十二支」の登場が早い。しかし、華麗で国際色豊かな唐代文化を印象づけるのは、なんと言っても「海獣葡萄鏡」である(→「海獣」は外来の異獣の意味。そうだったのか!)。直径30センチ弱の大型の鏡2枚(泉屋博古館所蔵と天理参考館所蔵)は、この展示会でも白眉の名品だと思う。小さな粒が寄り集まった葡萄の房、蔓の間を飛びまわる小鳥の翼など、繊細な細工、優美な造形は、見飽きない。中国の書画芸術は(日本と違って)「男性趣味」が強いと思うのだが、隋唐の工芸だけは、中国四千年の歴史の中で、全く例外的に女性好みだと思う。

 「海獣葡萄鏡」と言っても、実はさまざまな小動物がひそんでいることを、今回、発見した。小鳥、トンボ、蝶、蜂、蟹、とあって、蟹は最初、発見できなかったのだが、あとでロビーにあった写真図録で確認した。いちばん外側の縁模様に、なぜか間違い探しのように潜んでいるのである。

 盛唐の「八稜鏡」は本体が大ぶりなだけでなく、文様モチーフもひとつひとつ明確で大きい。以前、正倉院展で見た「鳥獣背八花鏡(ちょうじゅうはいのはっかきょう)」は、この仲間である。

 中唐以降になると、鶴・柳など和風に近いもの、駱駝、胡人、仙岳、伯牙弾琴図、孔子像などが現れる。優美な女性的センスが後退して、儒教・道教など、男性臭が強くなるように感じる。

 なお、1点だけ、唐鏡を模して日本で作られた鏡が出品されていた。表(いや、裏か?)の文様は、ごちゃごちゃしていて感心しないが、鏡として使用する面の側に、釈迦三尊と諸仏が毛彫されている。周囲の花吹雪も愛らしい。でも、像を映す際に邪魔にならないのかな?

 蛇足。京都の泉屋博古館本館で、次の週末まで行われている『近世の花鳥画』展。サイトのトップに上がっている彩色画は若冲らしいのだが、私の記憶にない作品である。花盛りの枝にずらりと並んだ目白がかわいいっ。見に行きたい!! 行けるか!?
http://www.sen-oku.or.jp/kyoto/program/index.html
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