「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「失われていく高音域」への執着

2023年03月13日 | 独り言

先日のブログ「村上春樹さんの記事の蒸し返し」の文中で、オーディオ愛好家からいただいたメールを転載させてもらったのをご記憶だろうか

豊橋市にお住いのMさんからで「オーディオは
スピーカーの音を聴くよりも音楽の空間が聴けるように心掛けている」というまるで仙人のような境地を述懐された方である。

当時(4年前)88歳とお伺いしていたので現在は御年92歳のはず、今回のブログ搭載時に「ご健在だろうか?」と、正直なところいささか気になっていた。何しろ日本人男性の平均寿命は「81歳」ですからね~。


ところが、ありがたいことにこのほど次のメールが送られてきた。

「お久しぶりです。ずっと貴ブログは拝見しています。相変わらず興味深い記事が続き、楽しみに拝見しています。今回は4年前のメールを再掲して頂きありがとうございます。


その後の変化をお伝えしようと思います。


約2年前90歳になった頃から難聴がひどくなってきました。高音が聞こえなくなってきました。ヴァイオリンの倍音が聞こえなくなったのに続き、ヴァイオリンそのものが聞こえ難くなってきました。好きだった弦楽が聞こえ難いのは非常に残念です。


中音部は未だかなり聞こえ、会話には不自由しませんが、テレビの会話は聞き取り難いので、必要な時は補聴器を使用します。

ピアノの音がかなり良く聞こえるので、ピアノの曲を聞くことが多くなりました。

それにつれて、今までのオーディオ・システムは弦楽合奏に重きをおいていたので、中音部に重点をおいたシステムが必要になりました。2年前にシステムを入れ替えました。

スピーカーをイタリア製のソナスファベールに、始めソネットⅢというスリーウェイを聴きましたが中音部がもの足らず、1年聞いて一つ上のクラス、オリンピカ・ノバⅠというツーウェイに替えて聞いています。アンプとプレーヤーはマランツの中級機。

モーツアルトのピアノ協奏曲などを楽しんで聞いていました。

しかし昨年夏頃から更に難聴が進みました。92歳後半からです。雑音が聞こえるのです。以下、略~。」

そうですか・・、身につまされます。

誰しも寄る年波には勝てないが、とりわけ聴覚は周知のとおり低音域よりも高音域がだんだんと聴こえづらくなっていく。誰だって例外なくそう~。

人間の可聴帯域は「20ヘルツ~2万ヘルツ」とされているが、おそらく自分の場合だと1万ヘルツ以上はほとんど聴こえないのではあるまいか。

それかといって、聴こえないことがそれほど気にならないのが不思議。

(耳では聞こえていないはずなのに)いったいどうして?

以下、勝手な妄想です。

これまで50年以上オーディオに腐心してきたので、脳の記憶の中でひとりでに過去の音の帯域を覚えており、高齢になって聴こえなくなった高音域を脳が勝手に補正している、いわば幻の高音域を脳が創っているのではあるまいか。

というわけです。さあ、どうなんでしょう・・。

我が脳はいつまでも「高音域」に執着しているようで、現在使っているプリアンプもやたらに高音域が伸びているのが大いに気に入っている。

最後に、昨日(12日)になってMさんから再度メールが来たのでご紹介して終わります。

「前回は悲観的な感想をメールしてすみませんでした。今回体調の回復もあってか、良い体験をしたのでお知らせします。

 

「追記」

3月中旬 日曜日 午前

何時ものようにブログに目を通した後、オーディオ・システムのスイッチを入れ、iPadを開き、内田光子(P)の新しい録音、クリーヴランド管弦楽団との共演で、モーツアルトのピアノ協奏曲25番k.503を選択して聴きました。

序奏から爽やかなオーケストラの響きが聞こえました。続いて内田さんのピアノが綺麗に続きます。クリアな音に聴き入りました。

暫くぶりの歪の少ない音響が聴けました。良い音、良い演奏です。


2楽章、3楽章と聴きますが音の歪は少なく、ピアノの音もオーケストラの音にも安心して聴き入ることが出来ました。


ヴァイオリンの音はどうか、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンでバッハの協奏曲を、オーボエとの二重協奏曲を聴きました。オーボエの音が素晴らしく大好きな曲ですが、以前のように綺麗に美しく聴こえました。ヴァイオリンの音も何とか聞こえます。彼女の素敵な倍音は無理ですが。


内田さんのピアノでベルリン・フィルとの共演、ベートーヴェンのピアノ協奏曲も問題なく綺麗に聴こえました。

こんなに良く聞こえる日もあるのだな と嬉しく思いました。

まだまだ楽しめる日もありそうです。」

御年92歳にしてこの文章・・。敬服します!

お互いに息を引き取る寸前まで音楽を楽しみたいものですね。



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