せっかくこの世に生まれてきたのだから、人生を思う存分謳歌したいというのが人情というものだが、その方法はといえば人それぞれ。
たとえば、近所のご主人はゴルフが大好きで「あの人からゴルフを取ったら何も残らない」と言われているほどだが、「このところ梅雨の時期とあってゴルフに満足に行けず、奥様に八つ当たりしているそうよ」と、家内が言っていた。
そして「あの人からオーディオを取ったら何も残らない」と、たぶん言われているはずなのがこの自分だ(笑)。
天候に左右されることもなく、さほどの体力も要らず、機器のスイッチを入れるだけで楽しめるとあってヒステリーの起きようがない「ありがたい趣味」だが、このところ毎日2系統のシステムを半分づつ使い分けている。
たとえば朝起きてから昼食までの時間を「トライアクショム」(グッドマン)で聴き、午後からはウェストミンスター(改)で聴くといった具合。
つまり一つの真空管アンプをぶっ続けで6時間ほど聴いている勘定になるが、つい先日のこと「WE300オールドもどき」の出力管を使ったアンプから「ブ~ン」という嫌なハム音が聞こえてきた。
音が鳴っているときはさほど目立たないが、鳴りやむとかなり盛大に聞こえてくる。明らかに故障である。さあ、大変!
こういうケースではひところは「ご飯が喉を通らない」ほど心配したものだが、今ではスペアのアンプが3台ほどあるのでさほど慌てることも無く泰然自若としている、といったらウソになるかな(笑)。
両方のスピーカーからハム音が出るということは、どうやら電源部のコンデンサーあたりのトラブルらしい(「北国の真空管博士」談)。
さっそく、大分市在住のアンプ修理のベテランKさんにお願いして取りに来ていただいた。持っていくのが礼儀だが、何しろ重たいので腰を痛めそう。
その点Kさんはガッチリした体格で腰痛とは無縁そうな力持ち。
「測定器で調べて修繕しておきます。1週間ほど時間をください」
「ハイ、よろしくお願いします。我が家のエース級なので部品交換の際はなるべくならハイグレードのものをお願いします」で一段落。
さあ、そこでスペアの真空管アンプの出番となるがどれを使おうかな?
候補としては3台あって「6098シングル」「PX25シングル」そして「300Bシングル」(モノ×2台)。
何しろ「ウェストミンスター」(改)のバックロードホーンの大きな空気の塊りを力強く押し出すためにはそこそこのパワーが必要となる。
そして、いろんな事情を勘案して最終的に選んだのは「300Bシングル」(モノ×2台)だった。
エースの故障のおかげで、ようやく表舞台に登場といったところかな(笑)。
せっかくの機会だからベストの真空管で臨むことにした。
前段管はマルコーニの「MH4」(メッシュプレート)、出力管は「WE300Bオールドもどき」、整流管は「CV378」(ムラード)を投入。
インターステージトランスは別にして、ほかのトランス類はすべてタムラの特注品。購入してから軽く30年以上になるが、改造を4回ぐらいやったかな(笑)。
このアンプで耳を澄まして聴いてみると、800ヘルツ以上を担当しているJBLの「175ドライバー」がややウルサ気味に聴こえてきた。特にヴァイオリンがややキツイ。
コンプレッション・ドライバーはツボにハマったときはいいが、ときに紙一重で刺激的な響きを出すことがあるが今回がそれ。
アンプとの相性がイマイチのようで、これだけ音が変わるのだからやはりオーディオは難しい。それかといって800ヘルツから使用できるユニットは無いしと困り果てたところ、ふと思い出したのが、つい先日購入したテクニクスのスコーカー。
あえなく「175」との競争に敗れて倉庫に保管していたが比較的穏やかな音を出すコーン型(口径12センチ)だから、駆動するアンプが変われば逆に持ち味が発揮できるかもしれない。
しかもスコーカー専用なので上限が「6000ヘルツ」になっておりハイカット用のコイルも不要ときている。これはまさに一石二鳥の「敗者復活戦」だと張り切った(笑)。
難なく結線(銀線)を終え、ネットワークのボリュームを最大限に上げてようやくバランスが取れた。
う~む、なかなかいいじゃないか!
明らかにクラシック向きの音で弦楽器がなかなか瑞々しい響きを出す。どうやら新アンプのおかげでスコーカーが息を吹き返したようだ。いつも言っているようにスピーカーを生かすも殺すもアンプ次第なんだから(笑)。
去る19日(金)にお見えになった超辛口のMさん(福岡)から、一押ししていただいたのが新装なったこのシステムだった。
ウェストミンスター(改)でクラシックを聴くのならこれがべストだろう。ジャズなら「175」の出番かな~。
それにしても、今回もやはり「ピンチはチャンス」で、1台のアンプの故障のおかげで思わぬ活路が開けたことになる。
改めて、オーディオは簡単に諦めたらダメですね(笑)。
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