前回からの続きです。
お客さんを迎えて、久しぶりにマランツのUSBメモリ・プレイヤーを活用して音楽を聴いてみるとCDと何ら遜色のない音質に今さらながら感心した。
Yさん曰く「マランツ単体で鳴らすのに比べて、DAコンバーター(エルガープラス)を通したせいか音が柔らかいですね。これならハイレゾなんか不要ですよ。」
たしかにじぶんもそう思う。SACDの良さは認めるものの、古典管アンプを使うとCDとの差はそれほどでもない気がする。
とはいえ、昨年、PCオーディオを始めようと思ってネットワーク・オーディオ・プレイヤーを購入したものの、そのうち面倒くさくなってCDオンリー(ときどきSACD)になってしまったわけだが、万一CDトランスポートが故障したときはUSBメモリでどうにか凌げることが確認できたのは大きな収穫。
クラシックからジャズ、歌謡曲までアトランダムにじっと耳を澄まされていたYさんだが、ふと「そういえば、たしかPX25(出力管)よりももっとグレードが上の球がありましたね。たしかPP・・・・。」
ウ~ン、そうきましたか(笑)。「PP5/400のことでしょう。」
実は本命を後でゆっくり聴こうと思っていたのだが、いよいよ「乃公(だいこう)出(い)でずんば蒼生(そうせい)を如何(いかん)せん」。つまり、数ある直熱三極管のうちプロの間では最高峰とされている「PP5/400」のご登場というわけ。
ついでに、この際PX25系の球を一括して試聴テストしてみることにした。
左からPX25(オスラム:ドーム管)、PX25(GEC:ナス管)、そして問題のPP5/400(英国マツダ:初期版)。撮り方が悪いもんだから両端の真空管の頭部が変形してしまったが悪しからず。
先にテストの結果から言わせてもらうと世評通りで何とも面白くない結果に終わった。
PP5/400は音の艶といい、彫の深さといい王者の風格を存分に発揮したものの、それに比べて何とも悲惨だったのがドーム管でこれが同じPX25系かと耳を覆いたくなった。音が平板そのもの。喩えて言えばオリジナルのWE300Bと中国製の300Bの差ぐらいある。ナス管については両者の中間といったところ。
根が「勿体ない派」なのでPP5/400は日頃から使う気がせず、その一方ナス管が5本あるのでそちらを優先して使っているが、このままではそのうちアッサリあの世とやらに行ってしまい、結局誰かさんを喜ばせることになりそう(笑)。
「出力管が違うとこんなに音が変わるもんですか」と、慨嘆するYさんを前に、今度はスピーカーの鳴き比べ。「AXIOM80」と「AXIOM300」の一騎打ち。
「AXIOM80」のハイスピード振りに比べるのはちょっと酷だが、比較するといやが上でも目立つ。「AXIOM300」はイマイチだった。低音域のだぶつきがちょっと目立ち、Yさんともども、「ちょっと下の方がもたつきますかね~。」
大いに気になって、Yさんが帰宅された後に「171シングル」アンプに繋ぎ替えて鳴らしてみたところ、とてもバランスのいい音に変身したのでほっと一息。「困ったときは171系アンプに戻れ」の伝説は依然としてしっかり生きていた(笑)。
アンプとスピーカーの相性は持ちつ持たれつでほんとうに面白い。
最後に、「今日もいい音を聴かせていただきました」と腰を上げかかったYさんを制して、「71APP」アンプでフィリップスの口径30センチのダブルコーン(ウェストミンスターの箱入り)を聴いていただいたが、「AXIOM80」にはない音の力感とスケール感に驚かれていた。
以上により、3系統のスピーカーに組み合わせるアンプが3台それぞれ決定した。
それもこれもPX25アンプのトラブルが発端だったわけだが、今では「ピンチはチャンス」という控え目な表現よりも、むしろもっと前向きな「ウェルカム トラブル」の境地になりつつある(笑)。
誰からも忌み嫌われるトラブルは、一方では旧来の固定観念を打破し、マンネリズムを克服するのにもってこいの機会なのだ。
PS (2016.3.2)
文中の「PX25(ドーム管)」だが「オスラム」ほどのブランドが、そんなに“しょうもない球”をつくるはずがないと気になったので、再度アンプに挿し込んで3時間ほどぶっ続けで聴いてみたところ、たしかに「PP5/400」ほどではないが随分良くなった。
とても「WE300Bと中国製の球」ほどの開きはなかったので、ここに謹んで訂正させていただきます。