「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「ウェスタン」には「ウェスタン」をもって制す

2016年03月17日 | オーディオ談義
「腐っても鯛」(クサってもタイ)という言葉がある。

日常よく使われるのでご存知の方も多いと思うが、念のため意味をググってみると、

「高級魚の代表である鯛は傷んだところで、それでも下魚よりは価値があるということから高級なものが多少悪くなっても何らかの価値があること。特に家柄が良かったり、昔業績を上げ評価された人が落ちぶれたところで、やはり気品があったり役に立つことを言う。」

これを真空管の世界に当てはめてみると、「WE300B」にこそピッタリ当てはまる表現ではなかろうかと思うのである。

オーディオ界きっての名門「ウェスタン社」(アメリカ)の真空管のうち、代表的な銘球とされているのがWE300Bで、とりわけ今から60年ほど前に製造されたオールドと称されている球はもはや使い古されてしまい、初期の性能を保っているモノは極めて少ないものの、やはり「クサってもタイ」でいまだに珍重されておりオークションなどではたいへんな高値で取引されている。

たしか一昨年(2014年)の12月だったか、WE300Bの刻印(1940年代)ものがペアで90万円を超えて落札されていた事はまだ記憶に新しい。落札者は関西在住のちゃんと存じ上げている方である。

今回は「泣く子も黙る」(笑)その1951年製の「WE300Bオールド」が見事に蘇った話をしてみよう。

前々回のブログ「秘儀~真空管の電極叩き~」(2016.3.13)で、古典管の青球「180」(ARCUTRUS)の復活劇を記したが、実はもう1本「北国の真空管博士」(以下、「博士」)に修繕を依頼したのが「WE300Bオールド」だった。

      

コード番号が「139」だから1951年の39週目に製造されたことが分かる。

「球切れ寸前の状態なので危険だからもう使わない方がいいですよ」と識者からアドバイスを受けたものの、捨てるに捨てられず未練たっぷりに部屋の片隅にずっと放っておいたものだが、ふと思いついて「180」と一緒にダメ元でもいいからと送付したもの。

送付してから2~3日後に博士から飛びっきりうれしいメールが飛び込んできた。


「WE300B復活しました。
顛末を申し上げますと、

① ベースピンが激しく変形しているのでイヤな予感

② ゲッタは経年変化ではなく別な理由で減少した可能性あり

③ チューブテスタではエミ減の兆候あり

との所見をもって対応にあたりました。
 
ベースピンの半田はそれほど劣化しているように見えなかったのですが、ピン自体がかなりつぶれたり変形していたのでベースピンに大きな力がかかり内部で半田不良を起こしている可能性ありと判断しました。古い半田を全て除去した後ベースピンの変形を補修し再半田しました。

チューブテスタで再試験するとエミ減の兆候は無く、他の300Bと同等の数値です。ライフテスト、ガステストともに合格で安心して使えると思います。手元の300Bアンプに装着して試聴しましたが雑音も無く良好でした。」

いやあ、ありがとうございました。オークション相場では少なくとも20万円前後はするであろう球が見事に蘇ったのだからうれしい限り。とはいえ、博士から(修理代の)請求が無いことをいいことに、「知らぬ顔の半兵衛」を決め込んでいるのはちと心苦しいが(笑)「古典管のファンとして復活するだけでうれしいことです。」との(博士の)言葉にすっかり甘えている。

これで我が家のWE300Bは5本になった。

既存の1951年製、1967年製、1988年製(2本)、そして今回の1951年製が新たに加わって5本。周知のとおり軍事用として使われていた経緯があってとても丈夫な球で知られており、これで我が命尽きるまでは大丈夫だろう。

ただし、このWE300Bは我が家ではメインの位置づけではない。個性が強く、うまく鳴らしづらい球として有名で、案の定「171系統」「PX25系統」の後塵を拝しているのが実状。

しかし、このまま手をこまねいておくわけにはいかない。

先日(3月5日)、同じAXIOM80仲間のKさん宅で衝撃を受けたWE349A・PPアンプに対抗するにはWE300Bの出番を待つしかないと考えている。何とか息を吹き返させて本来の実力発揮といきたいところ・・・。

「毒には毒をもって制す」ではないが、「ウェスタンにはウェスタンをもって制す」(笑)。

着々と計画が進行中である。


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