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「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ケーゲル指揮の「アルルの女」

2016年03月24日 | 音楽談義

ネットオークションというツールが無ければ我が家のオーディオは成り立たないと言えるほど頻繁に利用しているが、何も古典管を集めるばかりではなくCDソフトの方も大いに恩恵を蒙っている。

つい先日もCDをまとめて32枚落札。バッハ、ベートーヴェン、モーツァルトがほぼ1/3づつ。

            

同じ曲名のCDをほとんど持っているが、指揮者や演奏者が違うとどういう風に演奏しているんだろうとつい興味を惹かれてしまう。

実際に手に取ってみると予想した通り興味のある演奏がズラリで思わず舌なめずりしたが、その中でふと目に留まったのがケーゲル指揮の「英雄」(ベートーヴェン)。先日(3月12日)、福岡のオーディオ仲間たちが持参した有名どころの指揮者たちの「英雄」を6枚聴いたばかりなので、どれどれと真っ先に試聴。

とても真面目な演奏で律儀ともいえるほど。筋金入りの共産主義者だったケーゲルは東西ドイツが一緒になったときに前途を悲観して拳銃自殺をしたほどの人物だからさもありなんと思わせるが、もっと英雄らしい“ふてぶてしさ”が欲しい気もするところ。

ケーゲルにふさわしい演奏といえばまず筆頭に来るのが「アルルの女」(ビゼー作曲)だろう。この「アルルの女」はずいぶん昔の20歳前後にレコード盤でそれはそれは熱心に聴いたものである。

当時はオッテルロー指揮だったが廃盤になっていたのをようやく8年ほど前にオークションでCD盤を偶然見つけて激烈な入札競争のもと、ようやく落札したがケーゲル指揮盤もそれ以上の激戦だった。後者は当時はマイナーレーベルからの販売だったが、今では販売元が変わって容易く手に入るようである。

             

現在7人の指揮者の「アルルの女」を所持している。上段左から「オッテルロー」「マルケヴィッチ」「デュトワ」下段左から「ケーゲル」「クリュイタンス」「オーマンディ」「トスカニーニ」。

オッテルローは刷り込み現象が強いので除外するとして、一にケーゲル、二にクリュイタンスといったところ。

ちなみに、この曲はドーデの戯曲「アルルの女」の上演に際して伴奏音楽として作曲されたもので「第一組曲」「第二組曲」に分かれている。物語のあらすじはこうである。

「南フランスのプロヴァンス地方を流れるローヌ川、その下流にアルルという小さな町がある。町にほど近い農村カマルグにはママイという富裕な農家があり、そこの総領息子フレデリがアルルの町の美しい女に魅かれて結婚したいと思うのだが家中の人が猛反対。

失意のフレデリはいったん隣村の幼馴染ノヴィヴェットと結婚しようと考えたが、アルルの女が別の羊飼いの青年と駆け落ちするということを聞き、嫉妬のあまり、村人たちがファランドールの踊りに沸き立つ聖エロワの祭りをよそに、高い納屋の窓から石畳に身を投げて若い命を絶ってしまうという悲劇。」


当時、世間知らずの初心(ウブ)なことも手伝って、「人間には好きな人のために命まで捧げる情熱がはたしてあるものだろうか」と衝撃を受けたものだった。今となってはすっかりスレッカラシになってしまって、もうアキマヘン(笑)~。

昨日(23日)、久しぶりに思い出してこのケーゲルの「アルルの女」を聴いたが、とても録音もいいし大いに感銘を受けて、やっぱり名演との思いを強くした。

ちなみに、このケーゲル盤はクラシック評論家の「許 光俊」氏(慶応大学教授)が「名指揮者120人のコレを聴け!」の中でこう絶賛している。


「弦や木管の奏でる旋律はもはやこの世の音楽とは思えないように淡々とした風情、舞曲はブルックナー9番のスケルツォみたいに抽象的であり、遅い部分はマーラーのようだ。私はこんなにゾッとするような音楽をほかに知らない。

アルルの女がこんなにうつろに、こんなに透明に、こんなに感覚的な刺激抜きで、こんなに裸型の精神のように響いたことはなかった。大芸術家が死の前に達した恐るべき境地としかいいようがない。


そして最後にひと言。忠告めくが、ケーゲル晩年の音楽を決して気分が落ち込んだり、失恋したりしたときに聴いてはならない。命の保障は出来かねる。」

いやはや(笑)~。

とはいえ、まだケーゲル盤の「アルルの女」を聴いたことが無い人に是非ご一聴をと、お薦めしても「これは期待外れだ!」と恨まれない自信はあります。

ただし、第一組曲と第二組曲との間に他の曲目が沢山挿入されているのでご注意を!こんなCD盤もたいへん珍しい。


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