「秘すれば花なり」という言葉がある。平たく言えば「秘密にするからこそ価値がある」という意味合い。
たとえば手品を連想すると分かりやすい。手品のタネを知らないと「凄い」と思うが、いざタネを知ってしまうと「なんだ、そんな簡単なことか」と呆れることが多い。
このブログでいつもグダグダ書いているオーディオシステムにしても、これと似たようなもので読者にとっては「聴いていないからこそ値打ちがある」とも言えそうだ。
たとえば全国津々浦々の方々の中にはもしかして「この人は珍しいスピーカーや古典管を使っているようだし、一度、音を聴いてみたいものだ」と思っている方がいるかもしれない。
しかし、止めとき、止めとき~「聴かぬが花」なんだから。おそらく実際に聴いてみるとガッカリする人が大半だろう(笑)。
たしかずっと昔の「ステレオ・サウンド」誌だったと思うが、ジャズ・オーディオの大御所「菅原昭二」さんの投稿した記事の中で、懇意にしている和尚さんのオーディオシステムを聴きに行ったところ、その和尚さん、世間話をするばかりでとうとう聴かせてもらえず、そのうち亡くなられたという逸話が妙に記憶に残っている。
「音は実際に聴いてみるとそこで終わってしまう。想像の中に留めておくからこそ時間と空間を超越して無限の広がりを持つ。」というのが和尚さんの当時の心境だったのではなかろうかと、今にして何だか分かるような気がするのである。
「聴かぬが花」とは、そういうことである。
もう一つ、今度は読者側からではなくてホスト側から「聴かせぬが花」。
「2・6・2」の法則というのがある。別名「パレートの法則」とも言われる。ご存知の方も多いと思うが、以下、ネットから引用。
「人間が集団を構成すると、『優秀な人が2割、普通の人が6割、パッとしない人が2割』という構成になりやすいという法則。例えば、集団で何らかの活動をすると、2割の人が、率先してリーダーシップを発揮し、6割の人が、そのリーダーシップに引っぱられて働き、2割の人が、ボーっとしてる、という傾向がある。
次に、その2割のサボった人達を除いて、残りのメンバーだけで同様の活動をすると、やはり、メンバーの中の約2割の人が、新たにサボり始めます。逆に、サボった人ばかりを集めてグループを作り、活動をさせると、その中の約2割の人がリーダーシップを発揮し始め、6割の人は、それに引っぱられて動き始めるそうです。
これは、優秀な人ばかりを集めてグループを作った場合も同様で、6割は普通に動き、2割はパッとしなくなるといいます。スポーツの世界でも、お金をかけてスタープレイヤーを集めても、ズバ抜けて強いチームができるわけではないというのはこういうことなのでしょう。逆に、スタープレイヤーを引き抜かれてしまったチームには、次のスタープレイヤーが出てきたりします。
実は、生物の世界にも、似たような現象があります。アリは働き者というイメージがありますが、数%のアリは、働かずにふらふら遊んでいるそうです。そして、このふらふらしていたアリたちだけを集めて別の場所に移して、しばらく観察していると、その中の数%のアリだけがふらふらと遊び出し、他のアリたちは働き者に変身するそうです。逆に、働き者のアリばかりを集めて集団を作っても、まもなく数%のアリは遊び出すといいます。この数%という比率は、いつも変わらないそうです。」
プロ野球の巨人軍が金に糸目をつけず大物選手を引っ張ってくるものの、その割にいつも優勝とならないのもこれで頷ける。
さて、我が家のオーディオシステムを実際に聴いた人も実はこの「パレートの法則」が当てはまるのではないかと思うのである。
全体の2割は「とてもいい音だ!」、6割は「な~んだ、口ほどにもない普通の音じゃないか!」、残る2割は「これは最低の音だ!」
結局、8割方の人はガッカリするというのがせいぜいのオチというところだろう。
しかも、絶賛してくれた肝心の2割も2~3日経って“ほとぼり”が醒めてみると、結局「我が家の音が一番いい」と、こうなる。人間とは最終的には都合のいいように解釈して己を納得させる人種だから。
したがって「四面楚歌」になるのは目に見えているのでホスト側からすると「聴かせぬが花」!
しかし、分かっちゃいるけどお客さんが来るとなると何となく心が弾むのはいったいどうしてなんだろう(笑)。