「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

クロスオーバー周波数の選択

2015年01月31日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

いつも思うのだが、人間は生きていくうえであらゆる局面において常に右か左かの選択を迫られる。人生とはいわば選択の代名詞のようなものだが、その選択肢が多ければ多いほど質的に向上していくことは間違いない。伴侶の選択や就職先などの大事な選択においても言うに及ばず(笑)。

もちろんオーディオも例外ではない。

「北国のおじさん」からいただいた「ホルン」の取り付けから始まった我が家のJBL3ウェイ・マルチ・システムの改造も、アンプや背圧の調整具合など選択の連続となったが、いよいよ最終的な局面を迎えることになった。

3ウェイシステムの場合、3つのSPユニットをそれぞれどのくらいの周波数帯域で鳴らすか(ネットワークの編成)は死活問題である。以下、ちょっと専門的な話になるがどうか悪しからず。

オーディオ仲間のKさん(福岡)からの新しいご提案は次のようなものだった。

「低音用のユニットJBLのD130ですが、コイルなどで周波数をハイカットしなくてフルレンジで鳴らす方法がありますよ。自然減衰に任せる方法ですが、それでいて中高音域との繋がりも不自然ではないようです。一度試されたらいかがでしょうか。友人たちも最終的にはこれで満足していましたが、ただ昔はアナログ時代でしたが今はデジタル時代ですので、良否は定かではありませんが」

まったく予想だにしないご提案に驚いたが、よくよく考えてみるとD130をマウントしているエンクロージャー(ウェストミンスター)のフロント・ショートホーンはクロスオーバー1000ヘルツ用に作製されているのでマッチングに不安はない。

ネットによると「アルニコのD130は名機中の名機ですが、トランジェットの良さと引き替えに、帯域を低く伸ばしたり、低音のボリューム感を引き出すには大変難儀するユニットです。」とあって、肝心の推奨クロスオーバー周波数は2000ヘルツ前後のようだ。

これまで200ヘルツ前後でクロスさせていたので、このユニットを生かすには見当違いの使い方だったかもしれない。

とにかく実験あるのみで29日(木)の朝からベストのクロスオーバー周波数の設定に向けて作業に取り掛かった。オーディオってのはいくら時間があっても足りませんなあ(笑)。

まず冒頭に述べたように選択肢の範囲を出来るだけ広げることが肝要である。手持ちの道具からみて低音域と中音域のクロスオーバー周波数の選択肢は次の4つになった。(中音域と高音域のクロスオーバー周波数は7000ヘルと不変のまま)

 低音域のハイカット200ヘルツ(6.8mhのコイル使用、6db/oct)、中音域のローカット400ヘルツ(34μFのコンデンサー)

 低音域のハイカット600ヘルツ(2mhのコイル使用、6db/oct)、中音域のローカット1100ヘルツ(10μFのコンデンサー)

3 低音域のハイカット1000ヘルツ(12db/oct)、中音域のローカット1100ヘルツ(同上)

 低音域のハイカットなし、中音域のローカット1100ヘルツ(同上)

実験に移る前の作業として、コイルをいちいち入れ替えるときに「ハンダごて」を握らなくて済むように、低音用のSPコードの途中にSPターミナルを片チャンネルに4個使ってワンタッチでコイル類を接続できるようにした。これは我ながら名案だった。

1は現在進行形なので素通りさせて2から開始。使用した部品はウェスタン製の鉄芯入りコイル(2mh)である。

         

1に比べると緊張感を強いることのない何だかホッとするような自然な音である。これは有力候補としておこう。

次に3の実験に移った。

      

実を言うとこれは今回の改造でエンクロジャーに付いていたものを取り外したものである。したがってタンノイのオリジナルのネットワークの部品で今回の実験にはまさに“お誂え向き”だった。まさかこんなに早く出番がやってくるとは夢にも思わなかった。

試聴の結果は見事に合格。ここには人間の耳がもっとも敏感な帯域とされている20~1000ヘルツまでに違うユニットをクロスさせない利点が明らかにある。タンノイさんが頑強に1000ヘルツのクロスオーバー周波数を守っているのも一つの見識だろう。

しかし、10年ぶりくらいに電流を通してやったため、大きなコンデンサーの容量が不足していたのだろう、初めのうちは何とも心許ない音で違和感があったが2時間ほど連続して鳴らしてやるとようやく本領発揮してくれた。

最後にKさんご推奨の4の実験へ。

この音が一番伸び伸びしてスケール感が大きかった。「シンプル・イズ・ベスト」の観点からすると、必要悪であるコイルなどの部品を(SPコードに)噛ませない利点が明らかにあったが、中高音域との重なりがややキツクて折角のホルンの響きが相殺される傾向にある。

もしこういう鳴らし方をするのであれば、ホルンの代わりにミニの「蜂の巣ホーン」を使ってやると面白そう。な~に、ものの15分もあれば変更可能だが楽しみは後日に取っておくことにしよう(笑)。

       

さて、以上の実験結果だが4つの選択肢ともそれぞれ一長一短というのが正直な感想。

音の雄大さを求めるのであれば1と4が良かった。その一方、ローエンドへの伸びにやや不満が残るものの自然な響きと落ち着きを求めるのであれば2と3といったところ。

結局、今回の改造のテーマは「3ウェイシステムをフルレンジのような音で鳴らす」だったので、総合的に勘案してとりあえずの方法でいくことにした。

少しでもタンノイさんを使ってやらないと勿体ないしねえ~(笑)。


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