昨日(28日)の夕方、「北国のおじさん」から次のようなメールが届いた。
「ブログ読みました。紆余曲折大変なご苦労の末にシステム完成とのこと至極祝着でおめでとうございました。これでしばらくは二本立で天上の音楽を堪能できると思いますが、またいろいろと出てくるのがオーディオかもしれませんね!」
そうなんですよ!さすがに分かっておられる(笑)。
以下、まるで「一難去って、また一難」かのようなドラマ風の展開を記してみよう。
非常に重たくて扱いずらい38センチ口径のユニット(JBL)をタンノイのエンクロージャーに取り付ける難作業を終えて、ホッと一息ついていたところ、同じ「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)から電話が入った。
「ブログ読みましたよ。たいへんな作業でしたね~。それで、音の方はいかがですか?」
「はい、低音部が随分小気味よく弾むようになりました。中音域との繋がりも自然です。ただ、何と言うのか表現が難しいのですが、もう少し<音のタメ>といったものが欲しいところですね。その対策として現在ロ-カットの周波数を200ヘルツほどにしてますが、もっと下げてみようかと思ってます。」
すると「(ブログの)画像で見る限り、背圧を逃がす開口部がちょっと大き過ぎるみたいです。垂れ流しになると音の芯が出てきませんのでもっと(開口部を)小さくしてロード(負荷)をかけてあげたらいかがでしょう。バスレフ方式で鳴らす場合にしても開口部の大きさの調整は最重要事項のひとつになってますよ。」
「それはいいことを聞きました!背圧の調整は<AXIOM80>だけに必要かと思ってましたが、JBLのユニットにも必要なんですね。」
「はい、昔のユニットは背圧の逃がし方に工夫を要するものが多いですよ。」と、Kさん。
アルテックやJBLなど散々SP遍歴をされた挙句に、音のスピード最優先で現在の「AXIOM80」にたどり着かれた実体験者だけになかなかの説得力。
ただし、前日からの重労働続きで“か細い腕っ節”はもはや悲鳴を上げる寸前の状態。重量がおよそ10Kg以上はある「2440ドライバー」やステンレスホーン付きの「O75ツィーター」を左右両チャンネルのSP台の上から下げたり上げたりするのはもう勘弁してほしいところだが、いい音を得るためには労苦を惜しむわけにはいかないでしょうねえ(笑)。
ただSP台の上から重量物を降ろさなくて済むために残された方法が一つだけある。スピーカーと壁との狭い間をうまくスリ抜けさえすれば、裏蓋のネジ(16本)を開けることが出来るスペースぐらいはある。
そこで、祈るような気持ちでSPの裏側に回って体を平たくして滑り込ませてみるとどうやギリギリのところでうまく入れた。こういう時は見た目が貧相な「胸板の薄さ」がお役に立つようで~(笑)。
限られた狭い空間の中で電気ドリルを使ってどうにか裏蓋のネジを開けてから作業に入った。運よく手元に保管していたステンレス製の目の細い金網があったので2枚重ねにして開口部に被せてみた。これでかなりのロードがかかるに違いない。(ユニットの)コーン紙の前後の振幅を伸び伸びとやらせないように抵抗を与えることで、タメの利いた音を出せるなんて何だか不思議な気がする。
この辺はメーカーお仕着せのSPシステムをそのまま使っている人たちにはなかなか分かりにくいノウハウだろうが、作業の途中でふと、「人間も同じで何らかの適当なストレスがないと能力を存分に発揮できないのかもしれない」などと、妙なことを考えてしまった。
これが実際に金網を張った画像だが、ご覧の白い袋の中には鳥の羽毛をいっぱい詰め込んでいる。吸音材としての羽毛の効用は計り知れない。何しろ何千キロ以上もの長距離走行をする鳥の羽毛は何億年もの進化の過程で、顕微鏡でしか見えないほどの無数の穴が開いていて非常に軽くて丈夫に出来ている。
この無数の穴に音を吸収させて定在波などの不要な反射を防ごうという算段である。通常、羽毛といえば「羽毛布団」など、高級なものを想像しがちだが、な~に、スーパーで売っている500円ほどの羽毛枕を分解して自作の木綿袋に詰め直したものである。この木綿製というのがミソで、ポリエチレンなどのビニール製で包むと音を通さないので逆効果である。その代わり詰め込み作業が大変で部屋中に羽毛がふわふわと漂って、後の掃除に一苦労する。
さて、左右両方のスピーカーへの取り付け作業が滞りなく済んでいよいよ音出しである。
オーディオは理屈通りにはいかないことが非常に多くて、それがまた面白いところだが、今回に限っては理論と実践が一致してきっと良くなるに違いないという確信に近いものがあった。
はたして、大好きな「ファゴット協奏曲の第二楽章」(モーツァルト)を聴いてみると、これまで目立たなかった通奏低音が極めて明瞭に聴こてくるではないか!
次から次にお気に入りの盤をかけてみたが、明らかにこれまでとは違う低音が出てくる。ググッと踏みとどまるような制動力を伴った重量感のある低音とでも言うべきか。
いやあ、ちょっとしたことでこれだけ良くなるのだからありがたいですねえ。さらに(開口部を塞ぐ)金網が1枚の場合や3枚の場合の実験も必要だろうが、とりあえずこの状態で様子を見てみることにしよう。
もっといろんなソースのCDを聴いてみないと早計は禁物。
Kさんに、「いやあ、驚きました。おかげさまで低音域に随分タメが出てきましたよ。」と連絡したところ、「JBLのD130を使っている友人たちを沢山知ってますが、もっと面白い鳴らし方がありますよ。」
「エッ?」
以下、続く~。