6日(土)から7日にかけて日本列島は春の嵐がビュンビュン吹きまくった。木をもなぎ倒すほどの強烈な突風は当地九州も例外ではない。
7日(日)の午後はかねて予定していた福岡のKさん宅へ「AXIOM80」(以下「80」)の音を聴きに行く日だが、「(横風が強いので)高速をあまり飛ばさない方がいいわよ」と、カミさん。
「ああ、そうだな」(そのくらい分っとるわい!)
午前中に自治会の監査を済ませて出発したのが12時過ぎ。念のためKさんに連絡を入れると「高速は覆面パトカーが“うようよ”していますから用心してください」。
昔からやや「スピード狂」のきらいがあるのだが、重ね重ねの忠告なので今日ばかりは自重した方が良さそうだ。途中までカーナビ任せの安全運転。インターを降りてお迎えの車と落ち合い、無事先導してもらってKさんのオーディオルームに横付けしたのが14時過ぎだった。
すぐにウォーミングアップ済の「80」を聴くことが出来た。使っているアンプは、つい最近出来上がったばかりのEL32の出力管を使ったトランスドライブで、この球は以前、秋葉原で700円で購入したものというから驚いた。
「80に20年間騙されていたことにやっと気付きました。こんなアンプでも実に表情豊かに鳴ってくれるんですからね。やれ回路がどうとかトランスとか点火方式とか、絶対にこうでなくちゃいかんという方がよくおられますが、そんなことに拘っていると可能性を狭めるだけです。今さらながら80の持つ多様性に感心しました。」
Kさんは非常に柔軟性に富んだ方である。自分も「世の中、何でもあり」の無勝手流タイプなのでウマが合う方かもしれない(笑)。
Kさんのシステムで一番左側のスピーカーが今回お目当ての「80」のフルレンジ。
数年前に福岡市内で一度オリジナルボックスに入った「80」を聴かせてもらったことがあるが、どちらがいい悪いということではなく、これまで聴いたことがないほど低音から高音まで伸び伸びとして雄大だった。我が家とはまるっきり違う鳴らし方に「80」の新しい可能性が垣間見えた。
ひとしきり聴かせてもらった後に、ご所望があったので我が家から持参したPX25出力管を使った「球転がし」を行った。
今回は前回と違って4種類の「PX25」をテストした。
「GECのなす管」「テスラの直筒管」「テスラのなす管」「オスラムのドーム管」
フルレンジで聴く「80」は4ペアの真空管の性格を我が家以上に克明に表現してくれた。
「これまでいろんな方が持ってこられたアンプをテストしましたが、最初からこんなに80がうまく鳴ったのは初めてです。しかし、4ペアのうちで総合力で頭一つ抜け出ているのは“GECのなす管”ですね。」とKさん。
「まったく同感です」。我が家のテストではオスラムのドーム管が良かったが、こうしてフルレンジでテストすると様変わりするところが興味深い。これがおそらく本当の実力に近いところだろう。
フルレンジで鳴らす「80」のポイントは何と言ってもボックスの「つくり方」に尽きるが、これを作られたのはお知り合いの「H」さんだという。オーディオマニアの大工さんでご自身も「80」を持っておられて、ボックスつくりはお手のものだそうである。
「スペアの80をもう1セット持っていますので、今度は是非フルレンジで鳴らしてみたいですね。これと寸分たがわず同じボックスを作ってもらうわけにはいきませんか」という身勝手なお願いに対して、Kさんが快く目の前でHさんに連絡をとってくれた。
その結果「交渉がうまくいきました。OKだそうですよ。ただし今、忙しいので1か月間の猶予が欲しいそうです。これから同じ材質の木材を集めてくれるそうです。」
いやあ、1か月後が楽しみだが、今でさえスピーカーの置き場所に困っているのに、いったいどないするつもりなんや?(笑)
翌日(8日)に「お疲れでした」と、届いたkさんのメールにはこうあった。
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」(宣言)という言葉があるくらいだから、最後に物事を動かすのは「熱意」なんだろうが、使う人間の情熱度に応じて対応を異にし、百人百様の鳴り方をする変幻自在の我がままスピーカーがいまだにこの世にあるなんて皆さん信じられます?
まったく、これだからオーディオはやめられない(笑)。
帰りはとうとう17時過ぎになってしまった。途中の山間地は4月というのに気温が3度前後になって、車内まで冷気が忍び寄ってきた。「帰心矢の如し」で、つい、いつものクセが出てビュンビュン飛ばして1時間20分で我が家に到着!