「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

一期一会(いちごいちえ)の音

2013年04月19日 | オーディオ談義

「ジョン・コルトレーン アンド ジョニー・ハートマン」というタイトルのCD(以下、「コルトレーン」)。
           

「アレッ、この人ジャズ好きだったっけ?」。日頃、このブログを読んでいただいている方には当然の疑問。

それもそのはず、このCDは4月16日(火)での我が家での試聴会で、Kさん(福岡)が持参されたものである。今回はこのCDが「後々の語り草になるほどの音」で鳴ったというお話。

Kさんの我が家へのご来訪は3月18日、4月3日に次いでこれで3回目。高速をベンツさんでぶっ飛ばして来られても片道およそ2時間かかる程だからその手間を考えるとかなりのハイペース。

もっとも、我が家の音がそれほど魅力的というほどでもなくて、お互いに「AXIOM80」(以下、「80」)という珍しいSPユニットをこよなく愛する者同士、とにかく話のタネが尽きない。

この日も13時頃から夕方までみっちり試聴しながら、相変わらず「80」絶賛の展開になった。いい歳をした大人がお互いに自画自賛するのだから世話はない。おそらく傍の人間は見てられないことだろう(笑)。

この日持ってきていただいたアンプは「171A出力管」(以下、「171A」)によるトランス・ドライブのアンプ。わずか出力0.5ワットのアンプで「80」を駆動しようという目論見である。

          

この171Aは今からおよそ80年以上も前に製造された1930年代の貴重な真空管で、なす管(3桁番号の171A)と、もっと後になって製造されたST管(2桁番号の71A)とがあって、両方差し換えて試聴してみたがこれらはまったく別物だった。「なす管」が圧倒的に良かった。

「なす管」は大量生産に向いていないので次第に「ST管」に駆逐されていったが、PX25(イギリス)にしてもそうだが「なす管」の方が音の魅力は明らかに一枚上である。オーディオの場合は質と量が反比例することが極めて多い。

さて、両方の真空管ともに「レイセオン」社による製造である。ここで、「レイセオン」という会社をご存じない方もあろうかと思うのでググってみると、

レイセオンRaytheon Company)とはアメリカの軍需製品メーカーである。本社はマサチューセッツ州ウォルサム。世界第1位のミサイルメーカー。年2兆円超の売上のほとんどは、軍やアメリカ合衆国政府向けの製品である。従業員数7万人強のうち4万人近くが技術者である。

「レイ」は「光のビーム」、「セオン」は「神々より」という意味。マイクロ波レーダーの研究により電子レンジ開発のきっかけとなったメーカーである。電子レンジ無くして現代の生活は語れないので「レイセオン」社はもっと有名になっていいのだが政府御用達の軍需産業ということもあって、いっさい社名の宣伝をしないし、その必要性もない。

こういう由緒あるメーカーが作った古典管はやはり二の句がつけないほど素晴らしかった!

わずか0.5ワットの出力なので、ちょっと心配したがプリアンプのボリューム目盛を通常の10時前後から13時前後にアップすると十分事足りた。というか、これまで我が家の「80」で聴いた中ではベストともいえる音を鳴らしてくれた。

テスト盤は冒頭の「コルトレーン」。

3トラック目の「MY ONE AND ONLY LOVE」がKさんの愛聴曲で、「こんなに肩の力が抜けたコルトレーン(サックス)は、ほかではなかなか聴けません。大好きな曲です。」

Kさんのレパートリーはクラシックからジャズ、日本歌曲まで実に幅広いが、曲の好みが自分と実によく似ている。しかし「80の個性を愛する」素地が共通しているのだから、当然といえば当然。

「まるでフルレンジみたいな自然な鳴り方ですね。80と低域用のユニットとの繋がりにまったく違和感がありません。フォステクスは実にいいユニットですね~」と、Kさん。

オーディオの理想はフルレンジで鳴らすこと。しかし、1個のスピーカーで低音部から高音部まで十全に鳴らせるユニットはないと言ってもいいほどなので、仕方なく低音用ユニットや、中高音ユニットで周波数帯域を分けて、2ウェイや3ウェイで聴いているのが現状。いわば必要悪ともいえるが、この鳴らし方をするとユニット同士の音の繋がり感に永久に悩まされることになる。

「繋がりがいいのは80が低音域の方までしっかり伸びている証拠ですね。コルトレーンのサックスもいいのですが、ハートマンの声が何とも言えないですね。自然な暖かみがあって、思わずスピーカーの存在を忘れてしまいました。こんな鳴り方をしたのは初めてです。171Aアンプの再生能力にはつくづく驚きました。」

それからは二人で「凄い、凄い!」の連発。

「コルトレーン」のCDジャケットでメンバーを見てみると、サックスのジョン・コルトレーンは言わずもがなだが、ピアノが「マッコイ・ターナー」、ベースが「ジミー・ギャリソン」、ドラムが「エルヴィン・ジョーンズ」、ボーカルが「ジョニー・ハートマン」そしてエンジニアが「ルディ・ヴァン・ゲルダー」と、押しも押されもせぬビッグネームが並んでいる。

ジャズにはまったく疎いが、そのくらいは知っている。言い尽くされたことだが「凄い音」には名演奏・名録音の存在も不可欠である。

翌日(17日)になって、福岡でお仕事中のKさんと電話で話す中、異口同音に「昨日の音は後々の語り草になるほどの音でした。凄かったですね~」。

Kさんは12台の真空管アンプをお持ちだそうだが、前回持参していただいた「245」アンプと並んでこの「171A」アンプは逸品中の逸品である。Kさんと生存競争をしてまでも狙ってみたいアンプだが、如何せん自分の方が年上なので圧倒的に不利である。この上は一縷の望みをかけてもっと節制することにしよう(笑)。


とにかく「一期一会の音」とは、こういう音を指すんだろう。


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