前回からの続きです。
このたび千葉県在住のSさんから頂いた「Axiom301」は久しぶりにオーディオマニアとしての血を騒がせてくれた。
到着早々に真空管アンプ(WE300Bシングル)で小出力のテストをしたのち、日を改めて昨日、今度はボリュームを大きめにして試聴したところ、その一段と澄み切った音色に思わず陶然となった。
低域がどうとか、高域がどうとかをまるで超越したような音で、ただ全体の音の清澄感だけが強く印象に残った。エンクロージャーに容れていない裸のユニットの状態でこんなにいい音なら、それなりのエンクロージャーに容れてやると、”ぶッたまげる”ような音が出そうな気がする。
しかし、マグネットの大きさからして中途半端なエンクロ-ジャーではとても御しきれないユニットだと第六感が耳元で囁く。
よし、思い切って現在JBLのD130(38cm口径)を容れているタンノイ・ウェストミンスターのボックスを利用してみようかと思い立った。
現在のJBLも実に気に入った音を出していてたいへん名残惜しいのだが、「Axiom301」ではどういう音が出てくるか、そちらの誘惑の方が優る。周波数レンジでは明らかにJBLの3ウェイシステムに軍配が上がるが、音像定位、全体の清澄感では逆に上回るはず。
オーディオの先達として尊敬している五味康祐(作家:故人)さんは何よりも低域の清澄感を大事にされていた方だが、著作の中で「周波数レンジなんてくそくらえ」とおっしゃっていたのが強く印象に残っている。この機会に「レンジ VS 定位、清澄感」との勝負が実体験できるとはたいへんありがたいこと。
まったくオーディオ冥利に尽きる実験だが、これもSさんの思わぬプレゼントのおかげだとひたすら感謝。
そして、いよいよ9日(月)の朝からウェストミンスターのエンクロージャーに取り付けるための工作を本格的に開始。まずバネワッシャー、ボルト類の寸法を測って近くのホームセンターに走った。
次に、ウェストミンスターにSPユニットを取り付ける穴をむやみに開けたくないので、オリジナルのタンノイのユニット(HPD385=口径38cm)を引っ張り出してきて、「Axiom301」を取り付けるための補助バッフルの製作とネジ穴の調整を試みた。
参考までに写真左が「Axiom301」のユニット(口径30cm)で右がタンノイ「HPD385」(口径38cm)のユニット。ご覧のとおりマグネットの大きさがまるで違う。したがって、口径は8cmも小さいのに「Axiom301」の方が持ち重りがした。
そして、昼食抜きで一心不乱になって取り組んだ結果、ようやく午後になって補助バッフルが1本だけ形を成してきた。
補助バッフルの成形もさることながら、ネジ穴を4か所、同じ位置にするのに、オリジナルのHPD385の型紙を取ったりしてすごく時間がかかったが、これでどうやら目途がついてきた。
とりあえず手元にあった1.5cm厚のラワン材の合板を試験的に補助バッフルに使ったが、これで実際にエンクロージャーに当てはめてみて、うまくいけば、いずれはもっと厚くて上質の材質に作り替えるつもり。
これまでウェストミンスターのエンクロージャーにはオリジナルのユニットをはじめ、JBLの「130A」(口径38cm)ユニット、「アキシオム80」(口径20cm)ユニット、そしてJBLの「D130」(口径38cm)ユニットを容れて散々楽しんできたが、これほど、このエンクロージャーをいろいろ利用してきたのはおそらく自分くらいのものだろう。
何せ重さが100kg以上あるし、長大なバックロードホーンが利用できてそこそこ低音も期待できるし、このくらい信頼出来て便利なエンクロージャーはちょっと見当たらない。
参考までに拙い経験からだが使いこなしのポイントを一つだけ挙げておくと、クロス周波数だけはオリジナルどおり1000ヘルツ前後にすること。なぜならフロントホーンの形状が1000ヘルツ以下を1つのユニットでまかなうように設計されているから。以前、500ヘルツ付近でクロスさせたところ、ひねくれた音になって散々な目にあってしまった。
今回の「Axiom301」のクロス周波数(同軸2ウェイ)は、資料によると再生周波数が30~16000ヘルツとあるだけでよく分からないが、たぶん1000ヘルツ以上だろうと思う。とにかく実験なので先ず試聴することが先決。悪ければ元に戻して新しいエンクロージャーを作ればいいだけの話。
そのときは、奈良県のMさんから教えていただいた「ARU」方式に挑戦してみるのもいい。
とにかく、このエンクロージャーをタンノイのユニットだけに限定使用するなんて実にもったいないような気がするのだが、一途なタンノイファンからは顰蹙をかっている可能性もある。
まあ、何事にも万事控えめで、チャレンジ精神が旺盛なのはオーディオだけなので、熱意だけでも大目にみてほしいところだが。