千葉県のSさんからいただいたSPユニット「Axiom301」をタンノイのウェストミンスターに装着する補助バッフルなどの準備が整ったのが9日(月)の夕方。
このユニットが到着したのが7日(土)の午後だったのでかなりの速攻である。
どちらかといえば気ぜわしい性格だが、オーディオとなるとさらに拍車がかる。何しろ早く音を聴きたくて一心不乱。
10日(火)の朝から、いよいよ本格的な取り付け作業開始。
ウェストミンスターの大きな図体を手前にずらして、後ろに回り込めるスペースを最小限開けた。こういうときに「胸の薄いやせ形人間」は助かる。ネジを10本以上ドリルで取り出してから、裏蓋を取り外す。
タンノイのユニットは別にして、エンクロージャーの”つくり”の精度は卓越している。1㎜以下の隙間もなくピタリと本体に納まっているので、ネジをとっても裏蓋を外すのにはちょっとしたコツがいる。こればかりは実際にやってみた経験がものをいう。
しかし、これまでもう何回、裏蓋を開けたり閉めたりしただろうか。そのせいで随分、いろんな箇所に傷がついてしまった。オークションに出すつもりは毛頭ないが、もはや売り物としては完全に落第だろう。
次は8本の大きなネジで取り付けていたJBLの「D130」(38cm口径)を慎重に取り外す作業。一番心配していたのは、取り付けネジの頭がつぶれてドライバーが空回りすることだったが、つぶれかかったのが1本あっただけで、どうにか無事完了。
次に本日の作業のハイライトとなる「Axiom301」の取り付け。オリジナルのタンノイ「HPD385」の型紙をとって4本のネジ穴の位置をピッタリ合わせたつもりだったが、そこは素人工作の悲しさ。
3本まではどうにかネジ穴が一致したが、1本だけ位置がずれてしまいどうしようもない。ドライバーや鑿(のみ)を駆使して新たな穴を開けて応急処置。スピーカー内部の狭い空間での作業なのでやりにくくてしようがない。何とこの作業だけで4時間近くもかかってしまった。想像以上にたいへんな作業である。
右チャンネル側が終了したのが丁度12時ごろで、昼食どきだったが熱心に取り組んだためか不思議と腹が空かないので、続いて左チャンネル側の作業に移った。
今度は要領がだいぶ呑み込めたので、意外と早く作業が済んだがそれでも2時間ほどかかっただろうか。
収まり具合は写真でご覧のとおりバッチリである。オリジナルの38cm口径ではユニットの外側の一部が隠れてしまうので、まるでこのユニット(30cm口径)のために造られたようなエンクロ-ジャーである。
さあ、いよいよ注目の音出し。音量を十分に絞って真空管アンプのスイッチオン。試聴ソースはとりあえず放送中のテレビ番組。
あれっ、左チャンネルから爽やかな音が聴こえるものの、右チャンネルから音が出ない。裸のユニットで試聴したときはきちんと鳴ってくれたのに、これはいったいどうしたことか。
コードの接続不良、真空管アンプの故障を疑い、左と右のコードを差し替えたりしたがどうやら異常なし。やっぱりユニットに原因がありそうである。
重労働の後でもあり、あ~あ、と思わず腰が萎えそうになった。しかし、ほかの誰も当てに出来るわけでもなし、自分が動かないと事は進まない。
渋々だがまたもや重い腰を上げて、右チャンネルの裏側に回って、ドリルでネジを開封。”複雑な故障でなければいいが”と祈るような気持ちで、小分けした羽毛の木綿袋を取り除いたところ、なんとプラス端子(ねじ込み式)に接続していたSPコードが外れていた。
接続後に、内部スペースに吸音材の羽毛をぎゅぎゅうづめに押し込んだときに外れたのだろう。やっぱりネジ締めよりも接続端子にきちんと「半田付け」をしておけばよかったと”ほぞ”をかんだが、今さら左チャンネルと違ったことをするわけにもいかないので、再びコードをネジ込んだ。
それにしても原因が簡単だったので助かった。ユニットの複雑な故障なら楽しみは当分お預けで、専門の修理店行きの憂き目をみるところだった。
今度は慎重に、羽毛を詰め込んで裏蓋を閉じた。さあ、これで大丈夫。
まず真空管アンプのPX25・1号機で鳴らしてみたが、スッキリ爽やか、抜けがいいとはこういう音を指すのだろう。マグネットが強力なので反応が素早くてシャープな音である。クラシックだけでなくジャズにも十分いけそう。概ね8割方満足といったところだが全体的に中高域に偏っている印象を受ける。
このエンクロージャーだからもっと中低域が伸びてもいいはずだが、どうも箱鳴りを念頭に置いたユニットなのかもしれない。やはり奈良県のMさんが教えてくれた「A.R.U」方式のエンクロージャーも一考の余地がありそうである。
アンプの非力のせいかもしれないので、とりあえず替えてみようかと、以前、奈良県のMさんから修繕していただいたVV52B真空管シングルアンプの登場。我が家の真空管アンプのうち最も出力が高くて低域にも比較的、力があるアンプ。
このアンプの投入で随分良くなったが、まだまだ。
何事も実験だと、今度はDAコンバーターとメインアンプの間にバッファーアンプ(真空管式)を入れてみたところようやく、中低域部分に好ましいふくらみが少しばかりだが出てきた。
これで、どうにか聴ける状態になったところで、頼みの湯布院のAさんに試聴していただこうと連絡したところ、16時ごろにお見えになって二人で試聴。
ソースは最近よく聴いているベートーヴェンの「大公トリオ第三楽章」(オイストラフ・トリオ)、ニュー・サウンズ・スペシャルの「追憶のテーマ」など。
「いやあ、天井知らずのように音がスッキリと伸びていますねえ。随分昔、秋葉原でこの「Axiom301」と「トレバックス」のツィーターで聴かせてもらった時のことを思い出しました。当時、購入しようか、どうしようか随分迷ったものです。ピアノの音が特に素晴らしいです。こういう音は好きです。気に入りました。このユニットを持っておられた千葉県のSさんという方は音がよく分かる人ですね。これからエージング次第でもっと良くなってくると思いますよ。」
まずは合格点をいただいたが「以前のJBLの3ウェイシステムと比べるとどうでしょうか」とストレートにお訊ねすると、ウ~ンとためらわれたのち、短く一言、「音の佇まいが違いますよね~」。
それぞれに長所と短所があって総合的な判断が難しいところだが、無い知恵を絞り、丈夫でもない身体を使って、散々苦労したが、どうにか報われた格好で、しばし自己満足感に浸った。
これからサブウーファーを付け加えるのも使いこなしの一つの方法だが、JBLの3ウェイシステムや「Axiom80」の第一システムとの比較についても冷静に判断しなくてはならない。
果たしてこれからのエージング次第でどのように変身していくかな。