どちらかといえば用心深い性質(たち)なので何事にも常にスペアを準備することをモットーにしている。
とはいえ、さすがに「カミさん」のスペアを準備する(?)というわけにはいかないが、オーディオの世界においてその癖が全開中。
たとえば、アンプが故障した場合、さしたる技術をもっているわけでもないので修理に出さざるを得ないが、その間「音」が聴けないとなると毎日が暗澹たる気持ちになるので、使用中のトランジスターアンプ(低域用3台)のスペア(同じ型番のケンウッド01-A)を3台準備しているし、真空管アンプ(中高域用)に至っては、使用中の3セットのほかに2セットをいつでも使えるようにしている。いずれも3極管のシングルアンプ。
システムの中核となるDAコンバーターだってワディアの「27ixVer.3.0」をスペアとして中古品を1台保管中。
スピーカーだって負けてはいない。タンノイ・ウェストミンスターのボックスだけ利用してJBLのD130を装着して3ウェイシステムにしているが、万一故障した時にはすぐにタンノイのオリジナルユニット(同軸2ウェイ)を装着可能の状態。
一番懸念していたのは第一システムの「Axiom80」でこのユニットばかりは50年以上前の製造なので、もちろん市販されておらずオークションや専門誌の「売ります、買います」欄で手に入れる以外に方法はない。「日野オーディオ」(東京)に置いてあるという話を聞いたことがあるが、"また聞き"だが値段の方がちょっとバカ高い~。
このユニットはものすごく”つくり”が精巧で、繊細な音を出すことにかけては”ピカ一”だが、その反面すぐに壊れやすくて、ちょっと太めの低域信号をいれ続けると雑音が出だしてもうダメ。すぐに専門の修理屋さん行き。
これまでに、岡山にある専門店に2回ほど修理に出しているが、それだけに絶対にスペアの獲得は至上命令だったが、幸いオーディ専門誌「無線と実験」の「売ります、買います」欄に掲載されていた千葉県の「S」さんを通じてようやくスペアを獲得できた。およそ4年ほど前のことだった。
爾来、「S」さんとは1か月に1回ぐらいのペースでメールの交換をしてきたが、このほど長年続けてこられた出版関係のお仕事を”たたまれる”ことになり、オフィスの整理をされていたところ、3日ほど前に次のようなメールが舞い込んできた。
ようやく春めいてまいりました。
寒がりの僕にとっては願ってもない待ちに待った季節です。
さて、オフィスの片付けを少しずつ始めております。
○○さん(自分のこと)はアキシォム80にご執心でしたが、「301」はお使いになったことはございますか?
オフィスの納戸にワンペアありまして、もしご興味ありましたらお届けします。
実は、まだ一度も鳴らしたことはありません。
それなりに期待して買ったものの、どんな音なのかも分からないのですが、○○さんのアンプでドライブしたらかなりの音が出るのではと思います。
家に持って帰る荷物にも限度があり、勝手ですがおたずねした次第です。
折り返し、当方から次のようなメール(要旨)を送らせてもらった。
「301を聴いたことはありませんが、グッドマンの製品なら間違いないと思います。非常に興味があります。ぜひ鳴らしてみたいです。そこで率直にお訊ねしますが、お礼はいかほどしたらいいのでしょうか?」
とにかく、現在手元には使っていないユニットが”わんさ”とあるし、数万円単位の出費となると現役ではない身なのでちょっと厳しい。お値段次第では失礼ながらお断りする腹積もり。
ちなみに現在手元にあるユニットはすべて20cm口径のユニットでアルテックの「403A」が4ペア、リチャードアレンの「ニュー・ゴールデン8」が1ペア、ジェンセンの「P6P」が1ペアといった具合だが、今のところ使う目途はまったく立っていない。
すると間髪を入れず、次のメールが入ってきた。
お金はいりません。アキシォム80の時、ユニットに不都合があり○○さんにご迷惑おかけしていますので、その穴埋めということで使ってみてください。なにしろ20年間お蔵入りだった代物ですから、時々逆さまにしてコーンがおかしくならないようには気遣いましたが、実際どんな状態か自信ありません。
近く梱包して発送いたしますので、それこそ「ご笑納」ください。
廃業記念に旅をしたいと思っています。今度こそ、○○さんの音に出会いたいと思っています。
実にありがたいお話である。
すぐに「お言葉に甘えます。送料はもちろん着払いでお願いします。旅行の日程が固まり次第ご連絡ください。歓待します。」と、メールをうったのは言うまでもない。
それにしても4年前のことをきちんと記憶しておられるのに驚いた。たしか「Axiom80」をペアで当時、格安の13万円で購入したものの、到着早々1個のユニットに不具合があったので専門店に修繕に出して15,000円かかったのだが、この件はもうすっかり忘れてあるものと思っていた。
普通、人間は「貸し」となるといつまでも覚えているものだが、「借り」はすぐに忘れてしまいがちなのに、改めてSさんの律儀な人柄が忍ばれる。
Sさんは「Axiom80」を3ペア持っていたほどの方だからオーディオマニアには違いないが、どちらかといえば音楽優先の方でモーツァルトのピアノ・ソナタをこよなく愛されている方だが、早く我が家に来ていただいて、ぜひ譲っていただいた「Axiom80」の音を聴いていただきたいものだし(使いこなしの方は大いに自信がある!)、観光案内と夜の一杯も楽しみで今からワクワク。
さて、手に入る予定の「Axiom301」をネットで調べてみると、「80」ほどの評判ではないにしろ、同じAxiomシリーズの一環で強力マグネットによる同軸2ウェイ、口径が30cmのユニット。聴かない前から古き良きブリティッシュ・サウンドを彷彿とさせるが、何せ(同軸2ウェイなので)音源が一つで済むというのは音像定位の面から実に大きな魅力である。
かなり大きめのボックスを作って羽毛の吸音材を使い、背圧の逃がし方を工夫すればまともに鳴らす自信はあるのだが、
何せオーディオルームのスペースが問題。
さて、どこに設置しようかな~。おっと、その前にカミさんによく説明して「けっして購入したわけではないからね」と念を押しておかねば。