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「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~読書あれこれ~

2007年10月27日 | 読書コーナー

「ニセモノはなぜ、人を騙すのか?」(著者:中島誠之助、2007年8月、角川書店)

本書の略歴紹介によると、著者は古美術鑑定家、エッセイスト。1938年、東京生まれで古伊万里磁器の専門家として世に広まる。テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」に出演、鋭い鑑定ガンと歯切れの良い江戸っ子トークで人気がある。「いい仕事してますね」の名文句で96年度のゆうもあ大賞を受賞している。

「開運!なんでも鑑定団」は自分も日ごろから親しんでいる番組で、骨董品の値付けもさることながら、その由来、あるいは出品したいきさつなどに興味があるので、毎週飽きもせず、また退屈もせず録画して視聴している。

この鑑定団のトップに位置するのが中島鑑定士で、たしかに迷いのない自信を持った語り口が視聴者の幅広い信頼感を勝ち得ており、本書でも実に歯切れがよく分かりやすい。

本書のテーマは”目利き”の一言に尽きる。
ニセモノを見抜く目を養い目利きとなるための心得をこう説く。

世の中はニセモノだらけである
ニセモノにひっかかる三つの法則
骨董業界の厳しい修行方法

感性を鍛えるには「現場を踏む」
番組以外で絶対に鑑定をしない理由
許せるニセモノもある

とにかく、掛け軸の90%、焼き物も80%がニセモノだといってよいそうだが、そもそも骨董品に限らず世の中にはあらゆる分野でニセモノが氾濫している。

騙す人間と騙される人間の双方によってニセモノは成立するが、架空の投資話で被害を受ける人があとを断たないのもその一例で、騙される人間も欲の皮が突っ張ってしまいモノゴトの真贋を見極める力に迷いが生じた結果といってもよい。

しかし、本書ではニセモノはニセモノなりの存在意義を認めており、「ニセモノがあってはじめてホンモノが光ってくる」「人間は投機性のあるものを好むので、運試しをしたい気持ちを適えさせる」などの姿勢が始めから終わりまで一貫しており、随分おおらかな気持ちにさせてくれる。

こうした”
気持ちの余裕が逆にニセモノを見極める”目利き”の秘訣なのかも知れない””実害が伴わなければニセモノと分かっていて騙されるのも一興かもしれない”などと勝手に思ったりした。

このように、本書は本当に愉しく面白いままに一気に読ませてもらった。結構、人生の生き方に役に立ちそうだし読んでいない方にはご一読をお薦めしたい本。

                           

「山本七平の叡智」(著者:谷沢永一、2007年8月、PHP研究所刊)

本書は冒頭から谷沢永一氏(たにざわ・えいいち:関西大学名誉教授)の歯に衣をきせない次のような文章によってはじまる。

「自分のリクツを見せびらかすために本を書く人びとがいる。例をあげるなら、和辻哲郎や丸山真男などである。どうです、私は頭がいいでしょう、と反(そ)っくり返って見せるわけであるから、たしかにいい気分ではあるだろう。」

「その正反対が山本七平である。読者の一人ひとりが自分の考えを練ってゆくのに、少しはご参考になるでしょうかと、ごく控えめに思うところを差し出すのである。山本七平は自己顕示のパフォーマンスを嫌う。読者の役に立ちたいと願っている。知識を振り回さない。知恵を提供しようとする。」

和辻哲郎、丸山真男といった日本を代表する知性に対してなかなか手厳しいが、その反作用で山本七平をより一層際立たせているようだ。

山本七平はご存知のように昭和45年イザヤ・ペンダサンの筆名で「日本人とユダヤ人」(冒頭の有名な語句「日本人は安全と水はただで手に入ると思っている」)を書いた著者で、ユニークなものの見方で知られる典型的な日本の知識人。

本書は副題に「日本人を理解する75の視点」とあるように、山本七平が述べた75の視点をもとに著者が鋭く日本人を分析した著作である。

正直いって内容は少々硬いが、第6章「現代社会への直言」第7章「処世の知恵・偉人たちの教え」など、日本社会と日本人を理解するための好著の一つであり、昨今の混沌とした社会の羅針盤に十分なり得る著作だと思った。興味のある方は一読しておいても損はしない本。

                       









 




 


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