「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~オーディオ訪問記~

2007年10月11日 | オーディオ談義

オーディオ仲間のMさんから、電話が入りスピーカー(SP)を補強したので聴きに来ませんかという自信満々の雰囲気でお誘いがあった。

アンプなどと違って、SPは音質に一番大きい影響力を持っているので、どれどれとオーディオ愛好家特有の好奇心丸出しで10月上旬のある日、お宅にお邪魔した。

”北京秋天”を思わせるような青空のもと、クルマでスイスイと飛ばして40分ほどで到着した。

MさんのSPはアポジーといって約20年ほど前の平面型SPだが、このたびオークションで運よく定価の2割程度で同型をもう1セット手に入れられ、結局2台を前後に重ね合わせて使用しておられた。単純に考えると低域の面積が2倍になった勘定だが、これは平面型SPだからこそ出来る荒業。

おそらく日本はおろか世界中でも例をみない試みだろう。

試聴CD     ちあき なおみ全曲集~黄昏のビギン~
          パールマン「モーツァルトのヴァイオリン協奏曲5番2楽章」
          アバド指揮、シカゴ交響楽団
「ベルリオーズの幻想交響曲」
          フジ子ヘミング「ショパン夜想曲集」
          ヒラリー・ハーン「バッハの無伴奏パルティータ」

ヴォーカル(人声)、ヴァイオリン、オーケストラ、ピアノとひととおり聴かせてもらったわけだが、音質の変貌ぶりには心底驚いた。

これまで、アポジーの音は上品で奥行き感に優れ落ち着いた音質というイメージを持っていたが、今回はそれに加えて低域が充実したことによりひときわ雄大さが感じられた。

低域の解像度と豊潤な質感が両立した感じで、なかなか簡単には到達できないレベルの音質・音楽だった。

アポジーの当時の定価はたしか1セット50万円前後なので、2セット分で計100万円のSPということになるが、それ以上の相乗効果をもたらしていると思った。

Mさんのあまりお金を掛けずに音質を良くするアイデアと嗅覚には本当に恐れいってしまう。ただし、2台のSPの接続と設置場所、2台のアンプからの配線方法などはMさん独自の工夫がなされているので誰がやってもこんなにうまくはいかない、やはりつまるところMさんの聴覚と電気技術のなせる技なのだろう。

あとは、とりとめのない雑談に移った。

まず、試聴盤の一つ、ベルリオーズの「幻想交響曲」の話から。

この曲を福田総理が好きなのはたしかな話だが、ネット情報では自宅の広い試聴室には250万円程度のSPが設置されており、どうもタンノイらしいとのこと。当然、忙しい方なので、オーディオに割く時間は無くて業者まかせでSPをポンと置いただけだろうなどの話。

有名人はいくらオーディオが好きでも時間の制約を受けてオーディオ通になれないから可哀想だとのことから次のような話。

Mさんが昔の都内在勤中の思い出話で、当時演劇の世界では神様と崇められていた滝沢修氏(故人:演出家、俳優)のご自宅に、オーディオ機器を修理に伺ったところ、ご当人は随分詳しく熱心な愛好家にもかかわらず、「オーディオに関してはあなたが先生です」と実に腰が低く丁重にもてなしてくれたことなどの逸話を聞かせてもらった。

さて、この機会に俎上に上った
「幻想交響曲」について豆知識。

「音楽の世界には「出世作イコール生涯唯一の傑作」という作曲家がかなりいる。典型的なのはカヴァレリア・ルスティカーナのマスカーニ(1863~1945)と、道化師のレオンカヴァルロ(1858~1919)。この二人はデヴュー作品ただ1曲でイタリア・オペラ史に不滅の名前を刻んだ。

これにならって、エクトル・ベルリオーズ(1803~1869)のことを幻想交響曲だけの一発屋と呼んだら大方の不興を買うだけだろうか。以後の作品は全て見劣りのする作品がただ並んでいるだけ。

失恋の痛手から阿片を呑んで自殺を図った若い芸術家(もちろんベルリオーズのこと)が、もがき苦しみながら見た奇っ怪な悪夢を音楽にした幻想交響曲があまりにも未曾有の大傑作に仕上がったので結果としてその後は一発屋のごとくなってしまったが、「幻想」だけで彼の名前は永久に不滅となった。

ベートーヴェンの第九初演(1824年)からわずか数年、誇大妄想気味のフランスの青年作曲家が生み出したこの型破りな交響曲は瑕疵が若干あるものの、そのパワーとファンタジーで少々まずい実演に遭遇しようが、ボケた録音で聴こうがほとんどその価値を減じない。

とにかく幻想交響曲の存在しない音楽史など考えられない。CD盤はミュンシュ指揮、パリ管弦楽団のものが胸躍らせる。」

以上、出典は「名曲の歩き方」(1998年、著者:渡辺和彦、音楽之友社刊)の”音楽史の一発屋が放った大ホームラン”から。

                            









 


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