毎日新聞 2025/3/31 東京夕刊 有料記事 1463文字
『タイヤル・バライ 本当の人』の表紙。美術家のやなぎみわさんが装丁を手がけた
日本人の海外旅行先として人気を誇る台湾。公共交通機関のアナウンスで、台湾華語(標準中国語)でない響きに気づいた人も多いだろう。多民族共生の取り組みにも注目が集まるなか、日本にも深い関わりのある台湾原住民族(先住民族)の歴史に光を当てた物語の発表が相次ぐ。
劇団「Pカンパニー」の「フォルモサ!」(13~17日、東京・吉祥寺シアター、石原燃作、小笠原響演出)は、明治後期の台湾における原住民族政策を描いた。森丑之助(1877~1926年)をモデルにした人類学者、百木太郎を主人公に、“討伐”に乗り出す台湾総督府、原住民族に共感を寄せる百木、その妻、タイヤル族の養女らさまざまな視点で、支配/被支配の構造について問いかける。
特筆すべきは、タイヤルの母を持つ歌手、エリ・リャオさんをドラマトゥルクに迎えたこと。木霊役としても登場し、哀切に満ちた歌声で心を揺さぶった。
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