カラパイア2022年5月29日 20:00

南米中央部、ボリビアに広がるアマゾンの熱帯雨林で、巨大なピラミットを中心に道路や運河のネットワークで結ばれた「古代都市」が発見されたそうだ。
これは、上空から行った、「LIDAR(光検出と測距)」の調査で明らかになったもので、これは、スペインの侵略以前、この地域には高い文明を持つ人々が存在し、複雑な社会が形成されていたことを示す新たな証拠となる。
アマゾンの熱帯雨林地域に広大なネットワーク社会 ドイツや英国などの研究者による国際的グループは今回、ヘリコプターに搭載したレーザースキャナー(LIDAR)で、500~1400年頃に栄えた「古代カサラベ文化」の中心地(現在のボリビア北部のベニ県リャノス・デ・モホス)にある6つの地域を調査した。
密林の下で新たに発見された都市の広大なネットワークは、南米の熱帯低地では初めて発見された低密度型の都市である。階段状の台やU字型の墳墓など、北北西向きの精巧な儀式用建造物を特徴としている。
コロラド州立大学の考古学者クリストファー・フィッシャー氏は、第三者の立場から、アマゾン地域の初期社会について再考をうながす発見と解説している。
東側には高さ20メートルもあったピラミッドが存在するなど、都市構造は非常に大規模なもので、他の古代社会の規模に匹敵するという。
高度に発達した文明と農耕技術を持っていた これまで、リャノス・デ・モホス平原の痩せた熱帯の土壌では、中央アメリカのマヤと同じく、大きな人口や洗練された都市文明を支えられないだろうと考えられてきた。
だがカサラベの人々は熟練の農耕民族であったようだ。季節によって氾濫するアマゾンのサバンナを作物がよく育つ生産的な土地に変え、狩猟や漁業と併せて農業を営んでいたのだ。
カサラベ族がどのように儀式用建造物を建て、集落を形成したのかはほとんど知られていない。
今回の研究では、「コトカ(Cotoca)」と「ランディバル(Landivar)」と呼ばれる2つの大型集落は、地域ネットワークの中枢だったと紹介されている。
それより小さなものも含め、集落は合計24ヶ所発見されており、それぞれが四方八方に数キロほど伸びる土手道(これは現在でも視認できる)でつながっている。
「これら2つの大型集落は以前から知られていたが、その巨大さと建築の精巧さは、LIDARによる調査で初めて明らかになった」と、今回の研究論文は述べている。
コトカ集落のLIDARスキャン画像。儀式用の建造物や放射状に伸びる土手道を確認できる / image credit:Prümers et al., Nature, 2022高度な建築技術 カサラベ族は建築技術にも長けていたようだ。彼らはコトカを建設するために57万立法メートルもの土を使った。これは、ボリビア高地で発見された最大の建造物「アカパナ・ピラミッド」に使われた土の10倍もの量だ。
また中央集落を守るために堀や城壁を築き、さらに巨大な水利システムで食料を生産した。大きな人口を支えることができたのも、この技術のおかげだと推測されている。
相互に連結された集落の配置や規模から推測すると、カサラベ族の社会や都市の風景は、より一般的なアンデス文化のそれに似ていたようだ。
フィッシャー氏によると、今回のデータから、カサラベ族が自らの手で風景を変え、中心部に記念碑的建造物を建設するなどしつつ、複雑な集落階層で暮らしていただろうことが窺えるという。
カサラベ文化圏の地域 / image credit:Prümers et al., Nature, 2022アマゾン地域社会の常識をくつがえす 都市化された集落の階層的な配置は、考古学においては社会的な複雑さに関連づけられる。今回の発見は、そのような社会はなかったとされる初期アマゾンの常識をくつがえし、実際には複雑な社会が存在しただろうことを示している。
その一方で、空からわかることは限られている。もし集落跡の現地調査をすることができれば、古代の遺物が発見され、そこから彼らの食事やライフスタイル、文化や習慣についてより多くのことが明らかになるかもしれない。
だが急激な生態系の変化が、侵食されやすい土で築かれた遺構を脅かしている。カサラベ文化の痕跡を記録できる時間は、そう多くは残されていないとフィッシャー氏は話す。
地域の先住民族と強力なパートナーシップを結び、データ主権・アクセス・プライバシーの問題に取り組むことが、古代アマゾン社会の全体像を知る上で重要であるとのことだ。
この研究は『Nature』(2022年5月25日付)に掲載された。
References:Forgotten Ruins of 'Monumental' Amazonian Settlements Discovered in Bolivian Jungle / Lost Cities of the Amazon Discovered From the Air | Science| Smithsonian Magazine / written by hiroching / edited by / parumo
https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52313067/


南米中央部、ボリビアに広がるアマゾンの熱帯雨林で、巨大なピラミットを中心に道路や運河のネットワークで結ばれた「古代都市」が発見されたそうだ。
これは、上空から行った、「LIDAR(光検出と測距)」の調査で明らかになったもので、これは、スペインの侵略以前、この地域には高い文明を持つ人々が存在し、複雑な社会が形成されていたことを示す新たな証拠となる。
アマゾンの熱帯雨林地域に広大なネットワーク社会 ドイツや英国などの研究者による国際的グループは今回、ヘリコプターに搭載したレーザースキャナー(LIDAR)で、500~1400年頃に栄えた「古代カサラベ文化」の中心地(現在のボリビア北部のベニ県リャノス・デ・モホス)にある6つの地域を調査した。
密林の下で新たに発見された都市の広大なネットワークは、南米の熱帯低地では初めて発見された低密度型の都市である。階段状の台やU字型の墳墓など、北北西向きの精巧な儀式用建造物を特徴としている。
コロラド州立大学の考古学者クリストファー・フィッシャー氏は、第三者の立場から、アマゾン地域の初期社会について再考をうながす発見と解説している。
東側には高さ20メートルもあったピラミッドが存在するなど、都市構造は非常に大規模なもので、他の古代社会の規模に匹敵するという。
高度に発達した文明と農耕技術を持っていた これまで、リャノス・デ・モホス平原の痩せた熱帯の土壌では、中央アメリカのマヤと同じく、大きな人口や洗練された都市文明を支えられないだろうと考えられてきた。
だがカサラベの人々は熟練の農耕民族であったようだ。季節によって氾濫するアマゾンのサバンナを作物がよく育つ生産的な土地に変え、狩猟や漁業と併せて農業を営んでいたのだ。
カサラベ族がどのように儀式用建造物を建て、集落を形成したのかはほとんど知られていない。
今回の研究では、「コトカ(Cotoca)」と「ランディバル(Landivar)」と呼ばれる2つの大型集落は、地域ネットワークの中枢だったと紹介されている。
それより小さなものも含め、集落は合計24ヶ所発見されており、それぞれが四方八方に数キロほど伸びる土手道(これは現在でも視認できる)でつながっている。
「これら2つの大型集落は以前から知られていたが、その巨大さと建築の精巧さは、LIDARによる調査で初めて明らかになった」と、今回の研究論文は述べている。
コトカ集落のLIDARスキャン画像。儀式用の建造物や放射状に伸びる土手道を確認できる / image credit:Prümers et al., Nature, 2022高度な建築技術 カサラベ族は建築技術にも長けていたようだ。彼らはコトカを建設するために57万立法メートルもの土を使った。これは、ボリビア高地で発見された最大の建造物「アカパナ・ピラミッド」に使われた土の10倍もの量だ。
また中央集落を守るために堀や城壁を築き、さらに巨大な水利システムで食料を生産した。大きな人口を支えることができたのも、この技術のおかげだと推測されている。
相互に連結された集落の配置や規模から推測すると、カサラベ族の社会や都市の風景は、より一般的なアンデス文化のそれに似ていたようだ。
フィッシャー氏によると、今回のデータから、カサラベ族が自らの手で風景を変え、中心部に記念碑的建造物を建設するなどしつつ、複雑な集落階層で暮らしていただろうことが窺えるという。
カサラベ文化圏の地域 / image credit:Prümers et al., Nature, 2022アマゾン地域社会の常識をくつがえす 都市化された集落の階層的な配置は、考古学においては社会的な複雑さに関連づけられる。今回の発見は、そのような社会はなかったとされる初期アマゾンの常識をくつがえし、実際には複雑な社会が存在しただろうことを示している。
その一方で、空からわかることは限られている。もし集落跡の現地調査をすることができれば、古代の遺物が発見され、そこから彼らの食事やライフスタイル、文化や習慣についてより多くのことが明らかになるかもしれない。
だが急激な生態系の変化が、侵食されやすい土で築かれた遺構を脅かしている。カサラベ文化の痕跡を記録できる時間は、そう多くは残されていないとフィッシャー氏は話す。
地域の先住民族と強力なパートナーシップを結び、データ主権・アクセス・プライバシーの問題に取り組むことが、古代アマゾン社会の全体像を知る上で重要であるとのことだ。
この研究は『Nature』(2022年5月25日付)に掲載された。
References:Forgotten Ruins of 'Monumental' Amazonian Settlements Discovered in Bolivian Jungle / Lost Cities of the Amazon Discovered From the Air | Science| Smithsonian Magazine / written by hiroching / edited by / parumo
https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52313067/