goo blog サービス終了のお知らせ 

先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

国際プラスチック条約の合意を阻む3つの課題

2024-12-12 | 先住民族関連

 

WIRED 2024.12.11

世界的なプラスチック汚染を巡る政府間交渉は失速している。しかし、資金調達、有害物質の規制、生産制限について各国が合意できれば、条約の成立は不可能ではない。英ポーツマス大学「Revolution Plastics Institute」の研究者2人が論点を解説する。

本記事はクリエイティブ・コモンズのライセンスの下、『The Conversation』に当初掲載されたものである。

国連の後押しを受け、プラスチック汚染を終わらせるために開かれた政府間交渉委員会は12月1日、条約案をまとめることなく閉会した。次の会議は2025年半ばに開かれる予定だ。

交渉は、プラスチック生産の制限、プラスチックに使われる特定の化学薬品の規制、途上国が汚染の少ないビジネスモデルに切り替えるための資金援助を巡って沈没した。こうした点に強く反発したのはサウジアラビア、イラン、ロシアを始めとする主要産油国とその“同一歩調グループ”、そして石油化学と化学セクターの強力な支持者たちだ。彼らにとってプラスチックは急成長市場だからだ。

韓国の釜山で開かれた会議で合意はできなかった。一方で、野心的で力強いプラスチック条約を必ずつくるのだという新たな決意も感じられた。交渉の中でルワンダ代表が増大する汚染に対抗するにはプラスチック生産を削減しなければならないと論じた時、スタンディングオベーションが起きたのは忘れ難い光景だった。

ルワンダ代表の発言に立ち上がって拍手を送る代表団たち。PHOTOGRAPH: SAMUEL WINTON

有害な化学物質を含むプラスチック製品の、世界的な段階的廃止に賛同する95カ国のリストをメキシコ代表が読み上げると、共感する各国代表がいつまでも声援を送った。協働と多国主義の精神は明らかにそこにあった。

プラスチック交渉が行き詰まった理由

夜遅くまで続いた交渉でプラスチック汚染を減らすために法的拘束力のある条約を求めた国々は、自主的措置だけの条約を受け入れることを拒んだ。プラスチック製品のライフサイクルの各段階で規制をかける条約でなければならないと彼らは主張した。これにはプラスチック生産そのものを減らすことも含まれている。

主要産油国とその“同一歩調グループ”は、プラスチックの過剰生産が最先端の管理システムでさえ対応不能になるという事実から目を逸らし、代わりに廃棄物管理とリサイクルの改善を優先させようとした。

会議には批判の声もあがった。先住民族の人々が密室での交渉に入れなかったことや、条約の素案が性の平等や世代間平等に配慮していなかったからだ。

会議の最終盤、各国代表はプラスチック汚染を終わらせるための条約文書を作り続けるため、次の第5回政府間交渉委員会を2025年に開くことに合意した。そして次回会議では釜山での成果を出発点とし、後戻りしないと決めたのは重要なことだった。

2025年に交渉が再開した時、議論すべき点は多々残る。最も重要なのは以下の3点だ。

1. 資金援助

発展途上国は、特に、環境を汚染する使い捨てプラスチックへの依存から脱却し、新たなビジネスモデルへ移行するための資金を必要としている。だが、その財源がどこからくるのかについてのコンセンサスはない。

プラスチック廃棄物は、途上国にとって深刻な負担となっている。PHOTOGRAPH: JASON SWAIN; GETTY IMAGES

先進国の拠出によって専門のプラスチック基金を創設するのか、あるいは地球環境ファシリティ(世界銀行、世界環境計画[UNEP]、世界開発計画[UNDP]が資金を出し、途上国に無償資金提供する信託基金)のような既存のメカニズムを使うのかについても合意はない。

条約の素案はプラスチック生産に手数料や税金を課すことを示唆。国際条約を実効性あるものにするための必要な資金を集めるには不可欠な措置だと多くの政府代表が感じている。だが、プラスチック生産国にとってはこれが超えてはならない一線だった。貿易に理不尽なコスト負担をかける懲罰的措置だと受け止められている。

2 プラスチック生産

ルワンダとノルウェーが共同議長を務める「高い野心連合」は、プラスチック生産の削減措置が不可欠だと考えており、この立場は相当な証拠によって裏付けられている。

パナマは、条約締結後、各国が一次プラスチックポリマーの生産を持続可能な水準まで削減するための世界的な目標を採択することを求める野心的な提案を提出した。

しかしプラスチック生産の削減目標の設定は、産油国にとって越えがたい一線となった。閉会総会において、アラブ諸国グループとその他の国々を代表する声明は、そのような措置を受け入れられないことを明確にした。

3. 安全性

研究によると、プラスチックには16,000以上の化学物質が使用されているか含まれており、そのうち10,000以上の物質について安全性の情報が欠如し、4,200の物質には懸念があることがわかっている。

プラスチックに使用される化学物質の効果的な規制は、いかなるプラスチック条約においても要となるべきものだ。しかし、有害な化学物質の世界的な段階的廃止について100カ国以上の加盟国が支持する提案があるにもかかわらず、条約草案では化学物質への言及は表面的なものにとどまっている。

プラスチック汚染を終わらせるための条約の文言に合意を得るのは難しい。時間をかければ野心的な合意ができるとは限らないが、この地球的最重要課題に関するコンセンサスを得るためのさらなる議論の機会は増える。

(Published on wired.com, translated by Akiko Kusaoi, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』によるプラスチックの関連記事はこちら

マイクロプラスチックで発生した雲が、気候変動リスクになる可能性:研究結果

大気中のマイクロプラスチックが、雲を形成する能力を持つことが実験で判明した。研究チームは、この現象が気象システムに影響を与え、気候変動を加速させる可能性があると指摘している。この論文を執筆した科学者2人が寄稿した。

使い捨てプラスチックのゴミを減らす、革新的イノベーションのゆくえ

伸縮性のある海藻、逆自動販売機、QRコード付きのテイクアウト皿──使い捨てプラスチック依存を断ち切るさまざまな方法が世界で試みられている。わたしたち人類がプラスチックと共存する最良の方法とははたしてなんだろうか?

今後、都市への人口集中はますます進み、2050年には、世界人口の約70%が都市で暮らしていると予想されている。「都市の未来」を考えることは、つまり「わたしたちの暮らしの未来」を考えることと同義なのだ。だからこそ、都市が直面する課題──気候変動に伴う災害の激甚化や文化の喪失、貧困や格差──に「いまこそ」向き合う必要がある。そして、課題に立ち向かうために重要なのが、自然本来の生成力を生かして都市を再生する「リジェネラティブ」 の視点だと『WIRED』日本版は考える。「100年に一度」とも称される大規模再開発が進む東京で、次代の「リジェネラティブ・シティ」の姿を描き出す、総力特集! 詳細はこちら

https://wired.jp/article/these-3-things-are-standing-in-the-way-of-a-global-plastics-treaty/

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 編集者の視点 「風力開発、... | トップ | アイヌ文化の物語 中川裕(2... »
最新の画像もっと見る

先住民族関連」カテゴリの最新記事