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北海道新聞2023年10月20日 21:37(10月20日 21:44更新)
「私たちが黙っていたら、彼らの主張が事実だと思われてしまう」。多原さんは差別的な投稿の削除要請を今も続けている
自民党の杉田水脈衆院議員(56)=比例中国ブロック=がブログなどにアイヌ民族などへの差別的投稿をした問題は、札幌法務局に続いて大阪法務局も「人権侵犯」を認定する事態に発展した。ただ、インターネットや交流サイト(SNS)には杉田氏を支持し、アイヌ民族を中傷する発言が今も数多く投稿されている。法務局に人権救済を申し立てた多原良子さん=札幌市=は札幌法務局に差別的な投稿の削除要請を続けており「私たちは負けられない」と訴える。
「人権侵犯認定を受けても差別だったと認めない。杉田議員は今後も変わらないのだろう」。ブログなどで杉田氏に中傷されたアイヌ民族の多原さんは、札幌市内の自宅で取材に答え、淡々と語った。
杉田氏は2016年の国連女性差別撤廃委員会の際、多原さんや在日コリアン女性を取り上げて「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「日本国の恥さらし」とブログやフェイスブックに投稿。今年9月に札幌法務局から人権侵犯の認定を受けたが、自民党はその後、杉田氏を党環境部会長代理に起用。杉田氏は差別を行った認識は「全くない」と記者団に語っている。
多原さんはこうした自民党の対応についても「差別を追認する行動。社会に向け人権尊重を訴えても言行不一致に映る」と話す。
多原さんが国連女性差別撤廃委員会で木綿衣の「ルウンペ」を着たのは、先祖の思いを背負い、国際社会に現状を訴えるためだった。明治生まれの祖母は、同じく木綿衣の「チカラカラペ」を正装として着用していた。「その衣装に対して『コスプレ』『日本の恥』と言うなんて、民族の否定に他ならない」
杉田氏の投稿が国会議論で問題になった昨年12月の1週間で、ツイッター(現X)上にはアイヌ民族への中傷が約650件投稿された。北海道新聞の調べでは、9月に杉田氏の投稿が人権侵犯認定された後も、最初の報道があった直後の12時間だけで600件を超える投稿があった。「アイヌはもう日本にいない」「騒ぐのはアイヌになりすましてる連中」「えせアイヌ」など、いわれのない誹謗(ひぼう)中傷は今もやんでいない。
多原さんは「身の危険を感じる時もある」と話すが、・・・・・
(武藤里美)
※「チカラカラペ」の「ラ」は小さい字