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優しい林業「馬搬」が引っ張る 厚真・西埜さん 相棒は引退ばん馬

2024-07-07 | アイヌ民族関連

田中華蓮 会員限定記事

北海道新聞2024年7月6日 11:56(7月6日 18:22更新)

西埜将世さんと、馬の「カップ」。重機を使うより環境負荷が軽減できるとして、馬搬への注目が高まっている=2日、厚真町(中島聡一朗撮影)

 「よし、行け!」。その声に応えるように、栗毛のばん馬がドスドスっと地面を踏みしめ、合わせて300キロになる10本の丸太の束を力強く引っ張り始めた。体高約2メートル、体重は1トン近い、がっしりとした体格の農耕馬が、緩やかな下りの斜面を蛇行しながら慎重に進む。

 馬は9歳の雄で、名前は「カップ」。手綱をにぎるのは西埜将世さん。2017年から、胆振管内厚真町を拠点に、山林で伐採した丸太を馬で麓まで運び出す「馬搬(ばはん)」を行っている。

 1950年代まで北海道や東北を中心に盛んに行われた馬搬は、機械化が進み次第に衰退。多くの従事者が引退した。馬による農林業技術の継承や普及に取り組む一般社団法人馬搬振興会(岩手県)によると、林業で本格的に馬搬を行っているのは、道内では西埜さんのみ。本州では、岩手や宮城、福島県で数人いる程度だという。

 馬搬は、効率が求められる大量生産の現場には向かない。ただ、重機での運搬に比べると、集材用の道を整備する必要がなく、軽油などの燃料もいらない。馬の方が小回りが利くため、重機が入れない場所から木を運び出すこともできる。重機が通った後は踏み固められるため、植物が生えにくくなるが、馬ならそうした影響も少ない。

 西埜さんはもともと森が好きで、大学で林学を専攻し、卒業後は自然体験施設を経て林業会社に入社。そこで馬搬の存在を知り、興味を抱いた。自ら職業として取り組もうと、岩手県で馬搬を行う「先輩」や、道内の経験者などから指導を受け、林業が盛んで、地域資源を生かした起業支援に力を入れる厚真町で17年に「西埜馬搬」を設立した。

 1頭目の馬がカップ。ばんえい競馬の引退馬で、家族で世話をしながら丸太を運ぶトレーニングを積んだ。「馬との生活も初めてで、最初はとても苦労しました。だんだんと性格も分かってきて、自分も馬も成長していると実感できました」

 当初は仕事がなかったが、交流のある自然保護団体から、この団体が手がけている天売島(留萌管内羽幌町)の森林整備と間伐を請け負った。この実績が知られるようになり、厚真町の町有林の間伐や、三菱マテリアル(東京)の道内にある社有林の整備などを担うようになった。

 20年からは日高管内平取町二風谷地区の「イオルの森」で、町アイヌ文化振興公社の依頼を受け、アイヌ民具の素材となるオヒョウやクルミ、カツラなどの間伐も行っている。

 一緒に仕事をする馬は4頭に増えた。・・・・・・・

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 <略歴>にしの・まさとし 1980年、恵庭市出身。岩手大を卒業後、登別市の自然体験施設や、胆振管内白老町の林業会社に勤める。その後、渡島管内七飯町の観光牧場に入り、馬の飼育などを行う。馬搬を学ぶため岩手県の馬搬家やヨーロッパなどを訪問。1975年ごろまで渡島管内知内町で馬搬を営んでいた男性からも指導を受ける。2016年に胆振管内厚真町の起業家育成支援事業「ローカルベンチャースクール」に応募し、地域おこし協力隊として移住。妻と娘2人と暮らす。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1034514/

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