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[名古屋議定書]ここから新たな出発を

2010-11-02 | 先住民族関連
(沖縄タイムス 2010年10月31日 09時47分)

 名古屋市で開かれていた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、遺伝資源の利益配分ルールを定めた「名古屋議定書」を採択して閉幕した。
 激しく利害が対立する先進国と発展途上国の言い分を調整しながら、条約の目的に沿った前向きの国際ルールを定めるのは、容易なことではない。争点を先送りした部分がないわけではないが、新たな国際ルールを決めたという意味では、歴史的な成果と言っていいのではないか。
 今回のCOP10の主要議題は二つあった。
 「生物多様性の損失速度を2010年までに著しく減少させる」という02年の「COP6」で採択された目標の達成状況を検証し、新たな目標を打ち出すこと。遺伝資源の利益配分に関する国際ルールを策定すること、の2点である。
 交渉は先進国と発展途上国が激しく対立し、難航を極めた。
 帝国主義の時代から、あるいはそれ以前から、先進国は途上国の植物や微生物などの遺伝資源を勝手に持ち出し、それを利活用し、巨大な利益を上げてきた。途上国には今でも「利益横取り」に対する不満がくすぶっている。
 一方、先進国の製薬会社などは、医薬品開発に投入された資金と労力と時間を重視し、新たな価値を生み出したのは自分たちだと強調する。
 COP10で鋭く問われたのは、生物多様性の恩恵を受けていない途上国への利益還元をどのように進めるか、という点であった。
 名古屋議定書は、「遺伝資源の利用で生じた利益を公平に配分する」ことをうたう一方、先住民の伝統的な知識も配分の対象になること、遺伝資源の入手には提供国から事前の同意が必要なこと、などを盛り込んだ。
 「生物多様性と言いながら、おカネの話ばかりではないか」と、COP10そのものに疑問を持つ人がいるかもしれない。
 実は、生物多様性条約は、生物多様性の「保全」と、生物資源の持続可能な「利用」、遺伝資源の利益から生ずる公正な「配分」の三つを目的にしており、COP10もこれらの目的に合わせて議題が設定されたのである。
 途上国の最大の関心事は「利益配分」であった。
 条約に加盟している193カ国・地域の約8割を占める途上国。これらの国々が発言力を高め、主導権を握った国際会議でもあった。
 生態系の新たな保全目標については、「20年までに生物多様性の損失を止めるために効果的で早急な行動を取る」として、具体的な数値目標などを20項目にわたって掲げている。
 ただ、目標を達成するための道筋や、国・地方自治体・企業・個人の役割分担が、まだ明確ではない。例えば、保護区を設定し維持するためには、予算や人員が必要だ。
 企業は環境保全のためのコストを前提にしなければならなくなるだろう。生活習慣を改めるには、個人の意識改革が欠かせない。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-10-31_11605/
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