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北海道新聞2023年9月18日 13:09
次回は10月に鍼灸院がある宮古島に滞在する須藤隆昭さん。「私も南の島で充電します」と笑顔で話す(小川正成撮影)
釧路市で鍼灸(しんきゅう)院を営む須藤隆昭さん(64)は「旅する鍼灸師」を自称する。2015年に釧路市から3千キロ離れた沖縄県宮古島にも鍼灸院を開き、心身をリフレッシュする旅行「ヘルスツーリズム」の普及を目指す。24日には自身が代表を務める「日本鍼灸普及協会」の全国大会を釧路市内で開く。須藤さんに旅が健康にもたらす効果を聞いた。
――宮古島に鍼灸院を開いたきっかけは。
「01年に自転車で宮古島を旅し、コバルトブルーの海の美しさに引き込まれました。国内外の海を数多く見ていますが、宮古の海は澄みきって清らか。サトウキビ畑が広がるのどかな光景にも癒やされました」
――それで宮古島で鍼灸院を?
「開設を決めたのは、その14年後。当時父を亡くし、体調不良に苦しんでいました。体がだるく、顔中に湿疹が出て痩せました。思い切って仕事を休み、ニュージーランドの島へ旅に出ました。初日は仕事が頭を離れませんでしたが、3日目に『心配しても、ここで仕事はできない』と、のんびり海につかりました。その後、徐々にだるさが薄れました。ストレスが体調不良の原因だったのでしょう。心身をリフレッシュできる場を提供しようと思い立ち、宮古島に鍼灸院を開きました」
――どのように運営しているのですか。
「私を含む5人の鍼灸師と、アロマセラピストの妻が釧路から交代で宮古島に向かい、1~2週間ずつ滞在しています。私が島に行くのは3カ月に1度。定期的に南の島に行けて、リフレッシュにもなります」
――釧路から宮古を訪れる人はいますか。
「40人以上の患者さんが、宮古島まで来てくれました。うつ状態だった人が、島に着いたとたん笑顔になったことが何度もあります。昨年は、病のため車いす生活の青年も来てくれました。ビーチ用の車輪の太い車いすを借りて砂浜や波打ち際をうれしそうに走る彼の姿を見て、胸が熱くなりました。鍼灸院がなければ宮古島まで来ることはなかった―と言ってくれます」
――宮古島から釧路に来る人もいますか。
「4組の夫婦が来釧しました。釧路湿原でカヌーや散策を楽しみ、来た時より元気な顔で帰りました。転地療養という言葉があるように、人は日常と違うところに行くと元気になります。さらに、はり・きゅうやアロマセラピーをすると効果が高くなる。地方都市が観光客を増やし、地域活性化を図るには、観光プログラムをもっと多様化する必要があります。自然やアイヌ文化を満喫するアドベンチャーツーリズム(AT)とヘルスツーリズムを連動させれば、客層はぐっと広がるはずです」
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(聞き手・釧路報道部 佐竹直子)
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