武内敦貴 、斎藤雅史 会員限定記事
北海道新聞2024年7月12日 22:32(7月12日 22:40更新)
【白老】胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」は12日、開業4周年を迎えた。2023年7月12日~24年7月11日の4年目の来場者数は約32万3千人で前年から約1割減り、政府目標の年100万人達成に厳しさが増す。目標達成に向け、政府は誘客戦略を打ち出すが、現場からは「非現実的」との声も。アイヌ民族の文化伝承に力を入れるべきだとの指摘もある。
7月上旬、ウポポイの屋内施設で来場者が弓矢体験「アクシノッ」を楽しんでいた。21年から屋外で行っていたもので、悪天時は中止していたが、今月4日から全天候型に変えた。東京都の会社員、近江和希さん(27)は「(狩猟が大切な)アイヌ文化の一面が分かった」と満足げだった。
27日にはウポポイ内にある国立アイヌ民族博物館の館長室などが見学できるツアーを初めて開く。8月には、アイヌ文化でカムイ(神)とされるワシやキツネの視点で自然を眺める仮想現実(VR)コーナーを新設する。
■伸びぬ来場者
事業内容の見直しや新しい試みが相次ぐ背景には来場者数の低迷がある。
ウポポイ運営本部によると、4年目の月別来場者数は4月を除き全て前年を下回った。昨年5月の新型コロナウイルスの5類移行で、来場者の増加を見込んでいただけに、村木美幸運営本部長は「原因は分析しないと分からないが、結果を重く受け止めている」と話す。
100万人の目標達成に向け、国土交通省は3月、誘客促進戦略として89の施策をまとめた。予約システムの改修や同博物館のパネル増設が盛り込まれ、4月以降の見直しなどはこの戦略に基づくものだ。
100万人の根拠は、15年のアイヌ政策推進会議での菅義偉官房長官(当時)の発言だ。事務方は当初、年間50万人の目標を示したが、菅氏は旧アイヌ民族博物館(白老町)が1991年に記録した来場者87万人やインバウンド(訪日客)の増加をあげ上方修正を求めた。
胆振管内の自民党関係者は「菅さんが現役のうちは、目標引き下げはないだろう」とみる。
■旅行の個人化
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※「アクシノッ」の「ク」は小さい字。