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アイヌ副読本 混乱招いた定見のなさ(社説)

2012-07-20 | アイヌ民族関連
(北海道新聞 7月19日) 
財団法人「アイヌ文化振興・研究推進機構」の定見のなさには驚かされた。
自ら発行する小中学校向け副読本の記述が政治家から疑問視されると中身を書き換え、執筆した編集委員から「歴史の改ざんだ」と反発されれば、再び元に戻す。風見鶏のような対応と批判されても仕方ない。
財団はアイヌ文化振興法に基づく全国唯一の指定法人だ。独立の立場を貫かなければ、存在意義を発揮できない。こう肝に銘じるべきだ。
問題の副読本は「アイヌ民族 歴史と現在」と題し、2001年度から毎年、全国に配布してきた。
ところが、昨年来、国会や道議会で一部議員から内容に疑問を呈され、編集委員会に諮らずに内部で書き換えを行っていた。
たとえば「政府は蝦夷地(えぞち)を北海道と改称し、一方的に日本の一部として本格的な統治と開拓に乗り出した」という記述から「一方的に日本の一部として」を削除した。
こうした書き換えは小学生用、中学生用合わせて11カ所にも及ぶ。
さらに、今春は副読本を配らず、書き換え部分を列挙した「修整表」を各校に通知しただけだった。
歴史や文化をまとめるためには深い知識と確かな認識が不可欠だ。アイヌ民族の主立った人たちや歴史の専門家、教師を集めて編集委員会をつくり、時間をかけてまとめあげたのも、そうした理由からだ。
初版からすでに11年、改訂からも4年がたつというのに、いまさら中身を独断で変えるとは、委員会軽視もはなはだしい。反発を踏まえて従来の表現に戻すことにしたのは、当然の措置である。
教育現場は、修整表が届きながら、その直後にそれが撤回されるなど振り回されている。財団の無責任な対応によるのは明らかだ。副読本の配布は2学期になるというが、確実な履行を強く求めたい。
副読本をめぐる混乱はなお、収束していない。
財団が、近く新たな編集委員を選任して全面見直しを行う方針を示したことに対し、現委員が強硬に反発しているからだ。
全面的に見直すには、今の副読本のどこが問題なのか、明確に示さねばならない。なぜ新たな編集委員会をつくる必要があるのか。これについても丁寧な説明が欠かせない。
「アイヌ民族の歴史」を著した東北学院大の榎森進教授は「今の副読本は内容が的確で、分かりやすくできている」と評価している。
副読本を通じて同化や差別の歴史、共生社会の大切さを初めて知る子供も多い。その機会を確実に与えることが財団の本来の役割である。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/388697.html

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