ノートルダム大聖堂に行ったら、前の広場、内部、上だけでなく外部をぐるりと一周すべきであろう。ノートルダムは「バック・シャン(後ろ美人)」でもあるからだ。私達は大聖堂の高い屋根・天井を支える飛び梁(英語でFlying buttress飛び控え壁)は、「美しい」と思うが、ところが出来た頃は、ロマネスク建築が良いとされた時代だから「何と無骨な、恐竜の骸骨のようなものを外にさらして」と言われたようだ。『誰がパリをつくったか』(朝日選書498)の著者・宇田英男さん(1934年生、私より7歳上、東大建築卒)がその著書で述べている。「ギリシャ、ローマの古典的で完全と考えられた釣り合いを持つ立面意匠と単純な建物の立体形を追求するルネッサンス以後の原則から見て、ゴシック様式は美的に洗練されているとは考えられなかった。実際、ゴシック聖堂を後ろから見ると、恐竜の骸骨のように飛び梁が並び、その構造体の裸の表現は、今日のポンピドー・センターのように大胆で革新的である。」(同上書、24頁)まことにそうで、美的感覚も歴史的なものであろう。
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