西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

エマージング・グリッド(生成する格子)伊東豊雄さんの論に対して

2007-09-04 | 住まい・建築と庭
建築家・伊東豊雄さんは私と同年代だ。恐らく学生時代、前川國男や丹下健三の「打ちっぱなし」「ピロティ」の建築を目の前の近代建築として過ごしただろう。安藤忠雄さんも同年代だが、伊東さんとは少し違う傾向だ。伊東さんについては、私は仙台のメディア・テークをブログで紹介した。興味ある現代建築だ。http://blog.goo.ne.jp/in0626/e/98884d4a99287cd9cbce4fdfa4c5274d

一寸、話は飛ぶが、私の現在の職場のある高槻市に「JT生命誌研究館」というのがあって、館長は生物学者の中村桂子さんだ。年に4回、季刊として『生命誌』という変形の情報カードを発行している。申し込むと無料で送ってくれる。これをパラパラと見るのも無量の楽しみだ。今回来た54号に中村桂子さんと伊東豊雄さんの対談カードがあって興味を惹いた。
中村さんは言う「最近の街は四角い大きな箱が並ぶだけで、生身の人間が日常を楽しみ夢を見る空間ではありません。もっと楽しい街はできないのだろうか。自然と一体化して、しかも冒険や夢がある街は。そう思っている時、伊東さんの建物に出会いました。樹が伸びていくイメージ、体の内と外のようにつながっているようなつながっていないような空間。その基本に”生成する格子(エマージング・グリッド)”があると知り、これだと思いました。ただ緑があれば自然なのではなく、生まれる感じが大事なのです。」と。
対談で伊東さんは次のように発言している。
「これまでの建築がうまく表現できなかったのは、流動体を空間に置き換えることことです。僕らが考えたエマージング・グリッドは平面的な格子模様から洞窟状の空間を生成できる。コンピュターを駆使して、ようやく自然を構成しているシステムに少しだけ近づくことができました。」・・・更に
「20世紀を象徴する建築が直角の立体格子だとすれば、全部が曲面でできた格子状の面を自由に展開しながら人々が集う場を作りたい。内と外がつながるような場を作り、建築も、人間も外の環境と一体だということを皆で考えていきたいのです。」と。

私は、自然の曲面に対して、人間は、○、□、△を生み出してきた、そして最近、あまりに肩苦しい□中心の「秩序建築」がはびこってきたので、○、△や曲面でそれらを崩そうとしているのは理解できる。しかし、曲面ばかりだと又不安定となるのではないか。曲面を含めつつ、やはり最後にまとめるのは□ではないか、といった論を考えている。

又、各論かもしれないが伊東さんは、洞窟というイメージを盛んに言っている。レオナルド・ダ・ビンチの絵にも洞窟の中の聖母子像があったのではないか。この「洞窟」は、恐らく原像は母親の子宮ではなかろうか。薄暗いが落ち着く空間に違いない。
(写真は、伊東豊雄さん)

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2 コメント

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風船 (Koji)
2007-09-04 18:52:57
何か空間認識と成長・消滅を同時に表現できるかもしれない、風船の外側と内側のような気がします。
まあ、コンピュータを使わずとも、大きな風船、小さな風船は送り込む空気で調整すれば自然でしょう。

場違いなコメントでしたら、お許し下さい。
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コメントmerci! (ichiro)
2007-09-04 21:46:59
いえいえ、コメントあることで考えが活性化しますね。風船ですか、うーん、一寸考えてみますね。
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