西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

『日本人のための戦略的思考入門』を読む

2011-01-25 | 生活描写と読書・観劇等の文化
孫崎 享(まごさき・うける)著『日本人のための戦略的思考入門』を読んだ。1943年満洲生れ、東大法中退、外務省勤務、防衛大学校教授歴任、現在は「評論家」、こういう著書を書こうと思った第一は、・・・日本人の誰よりも馬鹿な戦争を見てきたことにある、と後書きに述べている。「外務省に入ってすぐ、ソ連赴任の直前の1968年にチェコ事件が起こった。モスクワ大学在学中に、中ソ衝突が起こった。二度目のソ連勤務の際にソ連のアフガニスタン侵攻があった。1986年のイラク赴任は、イラン・イラク戦争の真っ最中であった。2001年、イラン勤務の時には米国同時多発テロ事件からアフガニスタン戦争が開始された。 どれもこれも馬鹿げた戦争だ。しかし、当事者は真剣である。近視眼的、特定の問題にとらわれ、国全体を見誤る危険を、日本人の誰よりも見た。」と言っている。今後、日本がそういう馬鹿げた戦争に巻き込まれないためには、自前の戦略を持つべきだ、というのである。(多分、孫崎さんは高校は金大付属で私の2年後輩では、と思われる。)

副題にー日米同盟を超えてーとあるように、今後、中国が経済的にも軍事的にも米国に近付き、超えるような勢いになると、米国の東アジア政策も変わって「米中関係第一」になってくる、そういう時に「日米同盟深化」一辺倒では乗り切れないとの判断をしめし、ではどうしたらよいか、について「戦略的思考をすべきである」としている。

実例として過去の戦争における戦略や経済における戦略を検討している。戦略論の第一の文献として『孫子』をあげている。西洋ものではツキディディス『戦史』(アテネとカルタゴの戦い)をあげている。

結論として、「戦略論」に沿って種々検討し、現在の憲法の枠内での自衛論を導いている。現在の対米追随論者は、約束ではなく、印象を拠り所にしている、と手厳しい。外交官経験者らしく外交文書を拠り所に米国のしたたかさをついている。

対米自主外交への一里塚かな、と思った。