西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

「婚活」を応援する話よりー『古事記』の引用ー

2011-01-19 | 歴史とのつながり、歴史の面白さ
1月4日のブログで「婚活」へのヒント(メモ)を書いた。再掲すると以下の如し。



(1)目を見つめて! アイコンタクトは、愛コンタクトに通じる。

(2)目から言葉へ、言葉から行動の第一歩へ。

(3)共同理解は共同行動より。(視覚より入って、聴覚、味覚そして嗅覚、触覚で仕上げる)

(4)プロポーズは、古来は男性より(『古事記』より)、しかしバレンタイン・デーもあるよ。


(5)空疎な興奮でもなく平板な執務でもなくて生活は、計画ある営みである。(戸坂 潤)

(6)一人口は食べれなくとも二人口は食べられる。

(7)やはり「子はかすがい」か。

(8)縁は異なもの味なもの、噛めば噛むほど味が出る。
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で(4)に「プロポーズは、古来は男性より(『古事記』より)、しかしバレンタイン・デーもあるよ。」と書いたのだが、その『古事記』のその部分について以下に(現代語通釈を)引用する。これは、当日引用した本と違うテキストで当日より多い引用であるが、こちらの本が分かりやすく、全体を理解するうえでは必要と考えた。(『古事記』角川ソフィア文庫ー武田友宏著ーより)

「・・・イザナキ・イザナミはこのオノコロ島に降りて、結婚のための聖なる太柱と広い寝殿を建てた。そしてイザナキがイザナミに、「あなたの体はどんなふうにできていますか」と尋ねた。イザナミは「私の体は完成しましたが、塞がらない裂け目が一か所あります」と答えた。するとイザナキが「私の体も完成したが、よけいな突起が一か所ある。だから、私の体の突起したものを、あなたの体の裂け目に差し入れて塞ぎ、国生みをしようと思う。国を作りたいがどうだろうか」と誘うと、イザナミは「それはいいですわね」と賛成した。」

ここに日本最古の神話に男女神が最初に結婚する場面が「あっけらかん」と書かれている。著者は「これは古代の性教育に使われたかも・・・」と(注)に書いている。ここで、結婚の提案は、イザナキがしていることにも注意。

「そこでイザナキは「それじゃ、二人でこの聖なる柱を回り、出会ってから交わりをしよう」と言った。そう約束してから、イザナキは「あなたは右から回りなさい。私は左から回ろう」と言って、互いに柱を回った。
 出会ったとき、女神のイザナミが先に「まあ、すてきな男ねえ」と言い、そのあとで男神のイザナキが「ああ、いい女だなあ」と言い、ほめ言葉を唱え終ったのちに、イザナキはイザナミに向かって「女が男より先に唱えたのはよくない」とこぼした。
 そう言いながらも、聖なる寝殿において交わりをした。最初に生れた子は水蛭子(ひるこ)という子で育たないので、葦の舟に乗せて流し捨てた。次に淡島を生んだが、これも思うようでない小島だったので、子の数には入れなかった。」

ここに交わりに至る儀式が書かれている。まず、聖なる柱の周りを女は右から、男は左から回り、出会ったところで、互いにほめ言葉をかける。それをここではイザナミがイザナキに最初にかけたので寝殿での交わりの結果が思うようにならなかったことが記されている。また、島まで生むことが示唆されている。

「そこで二神は相談して、「今私たちが生んだ子は、よくない。やはり天神のもとに行って、事実を報告しよう」と決心、ただちに高天の原(たかまのはら)に参上して、天神の指示を仰いだ。そして、天神の命令で鹿の肩骨を焼いて裂け目の形で占いをした結果、天神は、「女が先に唱えたのがよくなかった。もう一度オノゴロ島に戻って、改めて唱え直すのがよかろう」と申し渡した。
 そこで二神は島に戻って、ふたたび聖なる太柱を前回のように回った。こんどは男神のイザナキから先に「ああ、いい女だなあ」と言い、その後で女神のイザナミが、「まあ、すてきな男ねえ」と言った。このように唱え終って結婚し、生れた最初の子はアワジノホノサワケ島(淡路島)であった。」

今度は、男神から先にほめ言葉を唱えたのでうまくいったのである。
以下、中略、次々と島を生んだ。淡路島のあと、四国、隠岐、筑紫(九州)、壱岐、対馬、佐渡島そして最後に大倭豊秋津島(おおやまととよあきづしま、本州)を生んだ。全部で八島なので「日本列島を大八島国というのである」というのが、この国生みの部分のまとめである。

こういう次第なので、日本では、古来から、男性から女性に声をかける(プロポーズする)ことになってきたのである。さて、バレンタインデーは、今後、こういう話にどううまく組み込んでいけばよいだろうか。久しぶりにじっくり『古事記』の最初の部分を読んでみたのであった。