西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

たいせつな本 ゲーテ著『イタリア紀行』 磯崎 新から

2008-09-22 | 住まい・建築と庭
昨日の『朝日』読書欄の「たいせつな本」で、建築家・磯崎 新さんがゲーテ著『イタリア紀行』をあげている。以下、引用しつつ私の思いも述べる。

「20世紀中期に出発した私たちの世代は、近代主義者としてユートピアをめざした。18世紀の中期に出発した世代は、啓蒙主義者として古典主義をめざした。そのとき若年のゲーテは既に純古典主義を自任していた。」

古典主義・・・過去のギリシャ、ローマを目指す。
ユートピア・・まだ見ぬ社会主義などを目指す。

「『イタリア紀行』はその旅の記録である。・・真の古典をみいだすために、意図的に道筋をえらんでいる。国境をこえるとすぐパラディオの本を買いこみ、その実作と図面の違いなどまでも細かく観察している。」

パラディオ・・・「パラディオは、16世紀後半、ヴェネツィアとその北部にあるヴィツェンツァで活躍した建築家です。ギリシア・ローマの建築様式を自分のモノとして作品をつくり、後世に(日本にも)広く影響を与えました。」(引用)

「フィレンツエに立ち寄らなかったのは、ルネッサンスはフェイク(注:偽物)と考えていたのではないか。」

ゲーテは、実際には、フィレンツエを通過している。フィレンツエのルネッサンスも「古典に返れ」運動だったが、ゲーテは真に返っていないと考えたのだろうか。

「そしてローマへ、更にナポリからシチリアまで南下する。」

ローマ、ナポリ、シチリアについては詳しく叙述している。

「ワイマール時代に、彼は庭園の一隅に、立方体のうえに球体を置いただけの単純で明快な○□の「理性のモニュメント」をつくってあったことを誇りに思うのである。」

○□を「理性のモニュメント」と言っているのが面白い。

「平松剛著『磯崎新の「都庁」』に、ゴシックの塔のような現都庁舎案にたいして、私が○×△□だけの提案をして、当然のことながら敗北した挿話がある。その遠い理由を2世紀前の本のなかにみいだしていただけるかも知れない。」

結局、磯崎 新さんは、若き頃のユートピア指向からゲーテの古典主義に変わったのであろうか。

それはさておき、○□△の空間には私も憧れている。私の墓は「下方上円ピラミッド墳」にしたい、と思っている。