東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

新築の歌舞伎座

2013-07-14 21:12:20 | 日々

P1011225 四月にこけら落しとなった新しい歌舞伎座。芝居好きのひとりとしては、行きたいと思いながらもチケットの景気のよさ(入手困難という噂)やら、現在の我が身の経済状況などから全く出かける機会がなかったのですが、昨日懇意にしていただいている方からご招待をいただき、はじめて中に入ることができました。

 銀座へも随分久しぶりで、人ごみの中が苦手でもあり、有楽町の駅から裏道を通って、辿りついたのでした。かねてより、新・歌舞伎座は前の建築とおりに新築すると聞いていましたが、なるほど外観はほぼそのとおりにできているんですね。客先に入って、一幕見や3階の座席からも花道の七三が見える様になったのはめでたいことです。ちょっと欲をいえば、せっかく昔の歌舞伎座を再現するのだったら、関東大震災後に建てられた当時のオリジナル型の中央の破風を再現したらいいのにと思いました。

 2階のロビーの吹き抜けも大体昔のような感じです。ただ今まで階段だったのがエスカレーターになって上り下りできるようになったのは便利ですが、昔の歌舞伎座を思い出すと、新場内にはまだ不慣れな感じがしました。

古典芸能だとか、伝統工芸とかの世界というのは、「昔はよかった」という価値観によって現役世代の人間がどれだけ昔のよさに追いつけるかという目標を持って精進する性格のものなので、役者さんも昔の名優と言われる役者さんは神格化されて、その役者さんの演出なり型を継承しつつ演じるのが正しい継承なので、いくら家柄の役者さんであっても、いきなり自己流に勝手に演じると変てこになってしまうんですね。観客の側にも「昔はよかったけど、、、」という言葉がつい出てしまうけれど、昔の良い芝居を観たというひとには敵わないです。

 私が歌舞伎座に通うようになった中学生の頃はまだ「団菊じじい」(9代目團十郎と5代目菊五郎を観た)という人たちはまだいました。またそのあとの世代の「菊吉じじい」(6代目菊五郎と初代吉右衛門を観た)という人がいました。

 ご招待いただいて見てきた出し物は「四谷怪談」の通し。菊之助の四谷さまは結構突っ込んで演じていたのであとで幽霊になるまでの無念さというものが思っていたより出ていてよかったと思います。「この恨み晴らさでおくべきや。民谷の家を根絶やしに、、。」という四谷さまの執念はそれなりに通っていたと思います。もちろん故・歌右衛門さんのような「疑着の相」レベルをというのは今後の再演を重ねてからの楽しみです。

 四谷様の芝居を観ていて、ふと我が身に重なって感じてしまい、ふと我に帰るということを繰り返していました。「日頃邪険な伊右衛門殿」ではなくて「てるこ殿」やら「秀樹殿」。「民谷の家を根絶やしに、、」ではなくて「小○の家」「堀○の家」を、、、、。こればかりは、「陥れられた立場」ならではの口惜しさ無念さ。四谷さまを観ていてこういう感情が湧いてきてしまう今日このごろです。