GWの中日頃、名古屋からはるばる私の仕事場へ立ち寄ってくださった方からのご提案で、名古屋の土人形の最後の作者であった故・野田末吉さんの型から抜き出して、自分の好きな風に彩色してみては、、とのことだったので、たまにはちょっと自分の楽しみとして型をお借りしてやらせていただくことになりました。まだ数を揃えて抜いていませんが、ちょっと試し塗りしてみたくなって塗ったのが画像の人形です。
今戸では饅頭喰いの人形は作られていなかったと思われ、伝世品、出土品ともに、これといったものが記憶にありません。ただひとつ、昔お世話になった湯島にいらしたHさんが小さな饅頭喰いの人形を持っていらして、今戸かもしれないと仰っていらしたのを憶えています。今戸だったのか或いは大阪の住吉辺りのものだったのかよくわかりません。
楽しみとして塗るにせよ、あんまりアヴァンギャルドなのは好きではないので、昔の今戸の人形の童子や娘ものの彩色パターンでやってみようと、ひとつ塗ってみました。ご存知の方にはすぐお分かりになるかと思いますが、「羽子板持ち娘」の裾模様を意識して塗ってみました。流石に名古屋の名物の型だけあって、どういう描彩をしてみても、名古屋の特徴から離れることは難しいように思う反面、面描きの筆の運びやすいこと。筆は吸い付くように滑るのは流石に型のよさなんだと思います。全体をぱっと見て、今戸という感じはしません(それだけ形に名古屋の特色が強く出ている)が、裾模様だけは今戸の古いパターンのひとつだと気がついてくださる方がいらしゃるとうれしいです。これが定番というわけではないので、他にも違う色違う模様も試してみたいと思います。