おはようございます。 生き生き箕面通信1600(130510)をお届けします。
・共通番号制度法案が衆院通過――国民を管理する恐ろしい社会へ
「国民主権」の国から「国家主権」の国へ、この国の形を逆転させる大転換が始まりました。国民一人ひとりに番号をつける「共通番号」制度の法案が昨日5月9日に衆院を通過し、今国会で成立する見通しになったのです。
国家が、国民を支配する権力を着々と強めつつあります。15年10月から実施され、日本はいよいよジョージ・オーウェルが描いた「1984年」の全体主義国家へ歩み始めることになります。
国民に共通番号を割り振ると、国は国民が何をしているか、どのような状態にあるかをたやすくつかむことができ、税金や保険料徴収が容易にできるようになります。「だから、不正な税金逃れができなくなり、社会の公平が保てるようになる。さらに、さまざまな手続きが簡単にできるようになる」と宣伝しています。たしかに、そうした面があるのは事実です。
しかし、施行する前からこれほど欠陥が分かっている制度も珍しいのです。すでに先行して実施しているアメリカなどでも有効な対策がなく、ほとほと困り果てています。
朝日新聞は本日朝刊の一面で、「米で5兆円被害」という見出しの記事を載せました。「米司法省の報告では、被害は2006年~08年の3年間で1170万人、総額500億㌦(約5兆円)に達した」と、アメリカ社会の国民番号制の問題点を伝えています。
最も大きな欠陥は、個人情報の漏えいが広く行われることです。情報漏洩によって、「なりすまし」や「詐欺」が至極簡単にできるようになります。漏洩された情報を海外で再構築すれば、強大な個人情報バンクができ、その悪用が大きなビジネスになりそうです。日本の警察権は海外には容易に手が出せず、さまざまな不都合が予想できます。
共通番号制は、国家権力にとっては非常に便利な使い勝手のいい制度です。共通番号を打ち込まなければ、ネットにも接続できないようにすれば、どのパソコンからどんな通信が行われているかも把握できます。憲法で定めた「通信の秘密」などやすやすと破れます。
金融機関で口座を開く時も、開設航空券や列車の乗車券の購入なども、共通番号カードが必要です。役所や主要な建物の出入りも、個人番号カードを通す必要があります。
はじめは穏やかにスタートする制度ですが、しばらくするとその本質をむき出しにするのが国家権力というものです。将来、徴兵制を実施しようとすると、この番号制で簡単に徴兵できます。日本は人口減少社会。ただでさえ労働力不足です。志願制では、必要兵力を満たすことはできません。そのとき、威力を発揮するのが、完全な個人情報です。
反対に、個人を社会から抹殺しようとすれば、個人番号を取り消すだけでいいのです。例えば、小沢一郎という人物をなんとかしたいとなれば、個人番号を消去するだけで、何もできないようにできます。
共通番号制は、憲法に違反する内容を数多く含んでいます。実施されるなら、違憲訴訟を起こす必要があります。
ジョージ・オーウェルが描いた近未来小説「1984年」は、巨大な全体主義監視社会を予見しました。当時のソ連のスターリン体制をモデルにしたとされています。スターリン体制では、政敵を「精神病」に仕立てて精神病院に隔離し、薬漬けで廃人にしていくことも実際に行われました。
本日の朝刊は、朝日新聞は1面と7面でこの共通番号制を取り上げましたが、読売新聞には1行も見当たりません。読売は国家権力側に立って、この問題を国民の目から隠してしまっています。
その代わり、読売は本日の1面トップで、「日本版NSC」創設の動きを伝えました。「国家安全保障会議」という、アメリカのNSCをモデルにした制度を作り、すべての省庁に情報提供を義務づけるものです。首相官邸が、すべての省庁の情報を集めるとともに、省庁をも監視できるようにする、監視社会への道です。
共通番号制法案に賛成したのは、自民、公明をはじめ、民主、維新、みんななどの政党です。国会議員の多くもこの制度の危険性についてはあまり認識がありません。
ジョージ・オーウェルの描く社会は、ユートピアからは程遠いディストピアの社会です。