おはようございます。 生き生き箕面通信1608(130518)をお届けします。
・馬脚を現した「日本維新の会」のお粗末な歴史・人権観
日本維新の会の石原慎太郎・共同代表もノコノコと乗り出してきました。石原氏は昨日5月17日に朝日新聞の取材に対して、「(先の大戦は)侵略じゃない。全然違う。正確な歴史観、世界観を持っていないとダメだ」と、同じ共同代表の橋下徹氏をコテンパンに批判し、大混乱。この会は「いったい、どないなってんねん」といった、はちゃめちゃな状況となってきました。馬脚を現した、というところでしょうか。
石原氏の持論は、「朝鮮半島にしても分裂し過ぎてまとまらないから、彼らの総意で(日本との)合併が行われた」です。日本が侵略したのではなく、頼まれたから合併してやったのだ、というのです。
当時の朝鮮国内には、たしかに日本との統合を望む動きが一部にあったのは事実のようです。しかし、伊藤博文の方針によって武力を背景に併合書に署名させ、併合に反対する安重根に暗殺されたのも歴史的事実です。安重根は日本ではテロリストですが、朝鮮では愛国の英雄と称えられています。
読売新聞は「昭和時代」をタイトルとする歴史企画を掲載してきましたが、本日の紙面(13面)では中国での「張作霖爆殺事件」を特集し、首謀者であった関東軍の高級参謀・河本大作大佐の犯行を詳細に検証しています。
昭和天皇はこの爆殺事件を重く見て、田中義一首相を直接呼び、関係者の厳重な処罰を求めたが、田中首相は軍部などの強い反対で天皇との約束を果たせず、辞職。結局は、関係者は軽い処罰で終わったため、その後の軍部暴走の下地を作ったとされています。
明治時代には、司馬遼太郎の「坂の上の雲」にも描かれたロシアとの戦争をしており、かろうじて勝利を得たものの、その後も「ロシアの南下政策」を食い止めることが日本の生命線と強く意識されるようになっていました。しかも、遅ればせの帝国主義レースに加わるために残された中国大陸を「取る」ことが、「八紘一宇」などの理論づけで正当化されました。「中国を日本の影響下に置く」ことは、至上命題だったのです。つまり、侵略です。
石原氏は、朝日新聞の発言要旨によると、「日本のような有色人種が近代国家を作るってことを許せなかったんだ、白人は。そういう歴史観を持たないで、あの戦争が侵略戦争だと規定することそのものが自虐でしかないんだ。歴史に関しての無知」と、白人へ劣等感を裏返しにした、オレさまこその歴史観をはずかしげもなくひけらかせています。
さらに、植民地支配について、「そんなもの、近世になってヨーロッパの白人は全部やったじゃない。世界中そうだった。食うか食われるかの時代だったんだよ、近代っていうのは」と、他国を支配下に置くことを正当化する植民地主義モロ出しです。
安倍首相も、「侵略ではなかった」派です。
日本では、いまだに先の大戦の検証作業が充分になされていないことを示しています。だから、「平和国家」を建設するという国民的合意が政治の舞台で揺らいでます。そして、事実上の憲法改定が進んでいます。
今回の混乱が、日本を見つめ直すきっかけになり、正しい歴史認識が築かれる出発点となるなら、意味のある混乱といえるのですが――。