おはようございます。阪神大震災から16年。これまで多くの支え合い、助け合いがありました。ぼくはそんな日本が好きです。それが劣化しつつあることにやるせなくなります。
生き生き箕面通信772(110117)をお届けします。
・「パクス・ヤポニカ」の奇跡?
宗教思想家の山折哲雄氏が、「『パクス・ヤポニカ』の奇跡」と題する論稿を、今朝の読売新聞に寄せていました。
日本の歴史1000年ほどを鳥の目のようにして眺めると、特質が二つ見えるそうです。ひとつは、長期にわたる平和の状態が2度もあった。平安時代の350年、江戸時代の250年。このようなことはヨーロッパの歴史でも中国、インドの歴史でも見られない。そこでこれは「パクス・ヤポニカ」と称してもいい歴史的事実といえるとしているのです。
もうひとつは、「1000年以上にわたって異民族による征服や支配をまったく経験することがなかったということだ。こんな国は世界のどこを探してもみつけることができないのではないか」ともいっています。ぼくは山折さんの識見にはかねがね敬意を表する者ですが、今日のこの小論には正直、「なんじゃい」でした。
山折さんによると、「ローマ帝国の『パクス・ロマーナ」や大英帝国支配による『パクス・ブリタニカ』に匹敵する、偉大な『パクス・ヤポニカ』(日本の平和)なのだそうです。しかし、ここで使われる「パクス」には、世界を支配するローマであり、大英帝国という意味、つまり覇権国を意味する内容が含まれています。
日本の平和は、たかだか一国内のこと。ましてやローマや大英帝国のように世界の政治や文化に、いいにしろ悪いにしろ、多大な影響を与えたことはありません。
二番目の特質に挙げられた、「異民族による征服や支配を受けることがなかった」という断定に至っては噴飯ものです。アメリカが日本を占領し、今も実質的には支配し続けていることはまぎれもない事実ではありませんか。
山折さんは、「パクス・ヤポニカ」を可能にした要因として、国家と宗教が調和の関係を取り結んだことがもっともベーシックにあると言っています。国家と宗教の調和のとれた関係とは、第一が神仏共存の多神教的なシステム、第二が象徴天皇制の独自の統治システムだった、そうです。
驚くのはこの後の結論の部分です。こう主張しています。「さて、そうであればわれわれも、そろそろ『パクス・ヤポニカ』の精神機軸である神仏共存のシステムと象徴天皇制の統治システムを世界に発信していく段階にきているのではないだろうか。精神(こころ)の輸出を通して船出していく。そういう時代がきていると思うのである」と。
宗教や統治システムの輸出がこれまでの歴史のなかでどれほどトラブルを生んできたか。中東におけるイスラム教とユダヤ教の対立はいまだに解決の兆しさえ見いだしかねています。そんなところへ「多宗教システムがお勧めですよ」とセールスにでもいこうというのでしょうか。
いまどきの学者は、かつて吉田茂が喝破したように「曲学阿世の徒」に堕してしまった者が多すぎます。「曲学阿世の徒」とは、真理にそむいて時代の好みにおもねり、世間の人に気にいられるような説を唱える者のことです。ぼくが敬意を表する山折さんもとうとうその部類に仲間いりしたようです。これも日本劣化のひとつの象徴です。
*今朝は熱が出て、節々が痛く起きられませんでした。インフルエンザにかかったのかもしれません。仕事も休みました。
生き生き箕面通信772(110117)をお届けします。
・「パクス・ヤポニカ」の奇跡?
宗教思想家の山折哲雄氏が、「『パクス・ヤポニカ』の奇跡」と題する論稿を、今朝の読売新聞に寄せていました。
日本の歴史1000年ほどを鳥の目のようにして眺めると、特質が二つ見えるそうです。ひとつは、長期にわたる平和の状態が2度もあった。平安時代の350年、江戸時代の250年。このようなことはヨーロッパの歴史でも中国、インドの歴史でも見られない。そこでこれは「パクス・ヤポニカ」と称してもいい歴史的事実といえるとしているのです。
もうひとつは、「1000年以上にわたって異民族による征服や支配をまったく経験することがなかったということだ。こんな国は世界のどこを探してもみつけることができないのではないか」ともいっています。ぼくは山折さんの識見にはかねがね敬意を表する者ですが、今日のこの小論には正直、「なんじゃい」でした。
山折さんによると、「ローマ帝国の『パクス・ロマーナ」や大英帝国支配による『パクス・ブリタニカ』に匹敵する、偉大な『パクス・ヤポニカ』(日本の平和)なのだそうです。しかし、ここで使われる「パクス」には、世界を支配するローマであり、大英帝国という意味、つまり覇権国を意味する内容が含まれています。
日本の平和は、たかだか一国内のこと。ましてやローマや大英帝国のように世界の政治や文化に、いいにしろ悪いにしろ、多大な影響を与えたことはありません。
二番目の特質に挙げられた、「異民族による征服や支配を受けることがなかった」という断定に至っては噴飯ものです。アメリカが日本を占領し、今も実質的には支配し続けていることはまぎれもない事実ではありませんか。
山折さんは、「パクス・ヤポニカ」を可能にした要因として、国家と宗教が調和の関係を取り結んだことがもっともベーシックにあると言っています。国家と宗教の調和のとれた関係とは、第一が神仏共存の多神教的なシステム、第二が象徴天皇制の独自の統治システムだった、そうです。
驚くのはこの後の結論の部分です。こう主張しています。「さて、そうであればわれわれも、そろそろ『パクス・ヤポニカ』の精神機軸である神仏共存のシステムと象徴天皇制の統治システムを世界に発信していく段階にきているのではないだろうか。精神(こころ)の輸出を通して船出していく。そういう時代がきていると思うのである」と。
宗教や統治システムの輸出がこれまでの歴史のなかでどれほどトラブルを生んできたか。中東におけるイスラム教とユダヤ教の対立はいまだに解決の兆しさえ見いだしかねています。そんなところへ「多宗教システムがお勧めですよ」とセールスにでもいこうというのでしょうか。
いまどきの学者は、かつて吉田茂が喝破したように「曲学阿世の徒」に堕してしまった者が多すぎます。「曲学阿世の徒」とは、真理にそむいて時代の好みにおもねり、世間の人に気にいられるような説を唱える者のことです。ぼくが敬意を表する山折さんもとうとうその部類に仲間いりしたようです。これも日本劣化のひとつの象徴です。
*今朝は熱が出て、節々が痛く起きられませんでした。インフルエンザにかかったのかもしれません。仕事も休みました。