香港を我が手中に収め、台湾、南沙諸島、尖閣列島、そして、経済支援として、多くの国々へ触手を伸ばす中国。その姿を歴史から覗き、対極にある日本を位置づける。本書はとても興味深い。
中国文明は黄河から長江の中原に王朝を築いて繁栄をしてきました。威厳を示すために大規模な建造物を建設し、青銅器、武器としての鉄器を作り続けました。そのために、建築資材や金属を鋳造用の燃料の木材を伐採すべく、森は切られ、農地へと変わっていきました。中原の北や西には(中国王朝から見れば)異民族が割拠し、素晴らしい中国文明を手に入れるために攻撃し、国家転覆を続けてきました。「破壊と征服」の中国の歴史を、亡ぼされることは一族の全滅を意味し、「野放図に欲望を開放してしまった中国文明」、「漢民族には、『共存』という発想はない」としています。「また、環境的にも、「文明は木を食べ尽くす」としており、この点も日本とは対照的です。
日本は縄文時代から、森を守り、森を活用してきた民族の国です。中国という一級の文明のことを知りながら、進歩ではなく退歩する如く、自然との共存を心掛け、一神教の国々からは野蛮とされるアニミズム、多神教を維持してきました。
地球環境、一神教的なグローバリズムなど、「地球が滅亡の危機に向かい始めている今、日本人自身が、多神教世界の住民であること、文明に抗、揺り戻しを何度も経験してきた民族だったことを、思い起こす必要」を訴えています。
新型コロナウィルスの感染も、『共存』を忘れるなというメッセージかもしれません。
『縄文文明と中国文明』(関裕二著、PHP新書、本体価格880円)