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百田尚樹先生講演会

2011-11-13 16:53:20 | 書店

私の所属する、兵庫トーハン会(取次会社トーハンと取引する書店の会で、トーハン神戸支店管轄の書店のみで構成されます)では、兵庫県在住の著者の講演会を毎年催しております。

昨年は、時代小説「みをつくし料理帖」シリーズで多くのファンを鷲づかみにされた、高田郁さんにお願いしました。高田さんには貴重な時間を頂いただけでなく、多くの気苦労を背負わせてしまったと反省しかりですが、作品を読むことでしか繋がれなかった高田さんのお話を伺うことでより深く著作に触れることができました。著者と読者の橋渡しの役を司る書店も、作家さんと親密になれるのが講演会と考えています。


第二回目は、11月9日(水)に新長田ピプレ大ホールにて行われました。百田尚樹さんは、毎回高視聴率を叩きだす、朝日放送の探偵ナイトスクープでは放送作家チームのチーフをされています。そんな彼がもうすぐ50歳になるなぁと思いにふけった五年前のある日、昔なら人生五十歳なんだと自らの半生を振り返り、このままの人生だと寂しい、テレビの放送作家だから字だけは書けるのだから、五十歳になるまでに小説を書こうと発起して完成したのが、『永遠の0(ゼロ)』(講談社文庫、定価920円[税込])。

 
戦地に行っていた叔父さんが一年前に亡くなり、近衛兵までした実父も病床に伏し、戦争体験をした人々が亡くなっていき、戦争世代への鎮魂の意味も込めて書かれた、特攻隊員の祖父を調べる孫のストーリーです。私の書評でも、「その人の置かれた時代や環境に生き方は大きく左右されるのは否めませんが、『生』の本質的な意味を常に考え続け、ぶれない生き方を確立することを学びました。平和な時代に暮らすからこそ、『この幸せは、特攻隊のような男たちが尊い血を流したから』という事実を忘れてはなりません。書名には『さまざまな思いを永遠のゼロにするな!』という願いが込められていると信じています。」と紹介しています。

この作品は原稿用紙900枚に及ぶ長編。文学新人賞に応募しようと調査しても、応募原稿は500枚が相場。それでは出版社に直接送ってみようと、文藝春秋編集部へ送ると、開梱されることもなく逆送。10年前に知り合った新潮文庫の担当者に「読んでください」と懇願するも、無名で作品が長いなど六つもの理由で断られ、最後にすがったのが太田出版の岡さん。番組に投稿された疑問を基に書かれた、「探偵!ナイトスクープ」プロデューサー・松本修著の『全国アホバカ分布考』(新潮文庫、定価820円[税込])の出版社が太田出版、そして、担当者が岡さん。文芸書をほとんど出版していなかった太田出版がGOサインを出した時に、角川書店からも百田さんに電話がありました。著作の多い、精神科医の和田秀樹氏に「なんとかならんか?」と渡していた原稿が、林真理子さん経由で角川書店編集部に漂着していた! このことに関して百田さんが礼状を書いた林真理子さんからは、「チャンスは強引なものです」という返信をもらい、迷いに迷った挙句、売れなくてもいいから、義理ある岡さんに希望を託しましたが、結局売れず…。私は太田出版の単行本で読み、感動しましたけどねぇ。

『永遠の0』は講談社文庫化され、現在90万部を超えました。やはり、広告・販売力がモノを云うんでしょうか。


   
太田出版からは、高校ボクシング部を舞台にした青春小説『BOX』を出版、この作品は映画化され、本は文庫化されて売れ続けています(上下とも各578円、太田出版)。ここから多くの出版社からの執筆依頼を受け始め、講談社さんから次々と作品が出されていきました。「オオスズメバチの作品を書きます」という百田さんに対し、講談社編集部は渋ったが、ここは百田さんの思いが勝ります。『風の中のマリア』(講談社文庫、定価580円[税込])はハチたちが擬人化されることなく、ハチの世界を書き綴っていく中で、結局人の世界を描いている感に至ったと述べられていました。
   
百田さんは同じジャンルの小説は書かれませんが、「同じことを二度とやらない性分からだから、どれも一所懸命書いています。読み終わって、明日から元気に生きるぞって思ってもらうために書いています」と講演を締めくくられました。


  

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