著者が兵庫県在住なら読んでみようと手に取った本は、20万部を突破していることを恥ずかしながら知りました。
クラスメートの花森雪希に、高校生の佐倉真司は告げられます、「それじゃあキミを死神として採用するね」と。時給300円、残業代や交通費は出ないし、勤務は早朝も深夜も時間は関係ない上に、業務内容は「この世に未練を残す≪死者≫をあの世に送る」という意味不明なもの。まとまった金の必要だった真司は契約書にサインをする。
最初の死者は、真司の好きな同級生の朝月静香。彼女から始まった死神のアルバイトの内容や死者の思いで知り得たことで、真司は他人の生きるということは自分にとっての多くの学びを得ていきます。
そして、学校でも美人で明るい性格の花森と一緒に行動することでいつしか芽生える恋心も、花森の実像を知りながらも温かい雰囲気の中のエンディングを迎えます。「幸せの花が、道端に一輪咲いていた。」と真司は確認します。
常識外れの設定下、やっぱり生きるっていいなぁと思えた1冊でした。
『時給三〇〇円の死神』(藤まる著、双葉文庫)