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仏教と科学が発見した「幸せの法則」

2017-10-30 15:43:31 | Weblog

 お釈迦様の本当の教えに近い、上座部仏教のスマナサーラ長老と、日本での幸福学研究の第一人者で、ロボット工学者・前野隆司氏の対談は非常に興味深く読めました。

 お釈迦様の教えである仏教は、「実践して、その経験に基づいて語っている」実証科学であり、「心の精密科学」と考えられています。その特徴は、「無常・苦・無我」であり、人間を幸福に導く教えです。世の中には永遠というものはなく、無常であり、苦の連続の人生では、「苦をなくそうと努力」するために人は成長し、自分自身が生きていたいという気持ちを諦めて、執着を一切捨てる「無我」の境地に到達することが悟りであると説きます。行動としては、むさぼり、怒り、無知の「貪・瞋・痴(とんじんち)」ではなく、生命あるものは慈しむ存在であり、平等なので、他人の喜びを自らのそれとして喜び、他人の悲しみは自分のそれとして思い、助ける、「慈悲喜捨」の実践を勧めています。

 幸福学では、金・物・地位などの有形の地位財とは違った、非地位財の4因子の幸せがあることを論じています。それは、

①第一因子:自己実現と成長(やってみよう因子)
②第二因子:つながりと感謝(ありがとう因子)
③第三因子:前向きと楽観(なんとかなる因子)
④第四因子:独立と自分らしさ(ありのまま因子)

であり、本質的には仏教の考えに似通っています。「我」をなくすことは簡単なことではありませんが、「貪・瞋・痴(とんじんち)」から脱却するには、自分の存在を考慮に入れない心を醸成しなければなりません。

 対談内の仏教の教えには難しい箇所も多くありましたが、これを読み解くのも「苦」と考えれば、素晴らしい1冊に出会えたと感じます。

(スマナサーラ長老・前野隆司著、サンガ、本体価格1,800円)

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