あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

海は見えるか

2016-06-06 15:46:11 | 

  『そして、星の輝く夜がくる』(真山仁著、講談社、本体価格1,500円)も文庫化され、続編が待ち遠しかったんですが、幻冬舎から『海は見えるか』が震災5年目を前に出版されました。
前作の『そして、星の輝く夜がくる』のことはこのブログでも書きましたので、ご一読ください。

http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/4383a28b9ea50b9e3378e49a22c21286

 今作は東日本大震災から2年目の遠間第一小学校での1年間を綴っています。神戸市からの応援教員・小野寺徹平先生は地域の人々からの強い要望もあり、6年2組の担任として再任の教壇に立ちます。1年目の子どもたちと比較して、覇気の無さを感じつつ、子どもたちの心の変容に寄り添っていきます。震災の復旧、復興事業に被災者は喜びつつも、その不条理な内容や進行に戸惑いますが、本当に思うことは

「何より俺たちが望んでるのは、普通の生活なんだよ。」

という声です。「普通」とは「安心」を意味し、それは「安全」よりも優先されること。津波対策としての高さ15メートルの防潮堤よりも、1000本の黒松が連なっていた松原海岸の復活こそが住民の心に「安心」を生み、

「何があっても時間は過ぎてゆくし、日常は続いてゆく。教訓を学ぼうと学ぶまいが、人は明日に向かって生きてる」

という希望が心に芽生えるんですね。阪神淡路大震災から21年を経た、自分の街の安心な存在は何だろうかと思いを巡らせますね。

 我々は生きていく以上は、まわりの環境に左右されます。どんな環境下にもいまここを「生きる」ことの素晴らしさに気づかねばなりません。

『海は見えるか』(真山仁著、幻冬舎、本体価格1,500円)

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