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板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

ヒトに問う

2013-11-26 17:09:11 | 

 東日本大震災から早2年8か月を過ぎました。11月上旬に岩手県石巻から釜石まで海岸線を車を走らせましたが、津波の爪痕はまだしっかりと残っていました。阪神淡路大震災を経験し、何年も経つのに更地のままの土地をずっと見つめていた身としては非常につらい思いをしました。自然災害だけではなく、福島第一原発はまさに人災。大量の放射能を吐き出し、安住の地を人の住めない地へ変え、原発そのものを廃炉にするにも長い年月を要します。

 その福島を何度となく訪れ、また、被災した福島の人たちと交流した倉本聰氏が、心の憶測から絞り出すように書いたのが本書。「人」ではなく、「ヒト」に問うとしたこのエッセイは、時間と共に忘れ去られようとしている原発事故を再度問い直すものです。

 原発事故に関しての責任は、東電や国に向けられていますが、「日本人全体の責任」として背負うべきだと述べられています。これほど危険極まりないものであり、放射性廃棄物、つまり原発のごみについては処置の方法さえも確定していない。にもかかわらず電気を消費し続けています。

 「もしかしたら今の文明というものは、あたりまえにさからい、それを敵にし征服しようという敵意に充ちた挑戦ではなかったか。」

 「あなた方の小さな、些細な私欲。倫理を忘れた成功の快感。僅かな金銭につながる欲望。そうしたものが今福島の原発施設から、小さなセシウム、微量のヨウ素の一粒になって、日本を、全世界を脅かしている。」

 我々はどうすればよいか?それに対して、倉本さんはしっかりと告げています。

 「ヒトの欲望を抑えることである。欲しいものを減らしてしまうことである。需要そのものを減少させることである。需要仕分けをすることである。」

 ヨーロッパには自動販売機やコンビニはないそうです。こんなことなら、自然を神と崇めてきた日本人ならできるはずと思います。便利を遠ざけ、不便を楽しむ、「吾唯足知」の精神の復活こそが必要です。

 

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