いやぁ~面白かったです。一気読みしてしまいました、 『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(井野朋也著、ブルース・インターアクションズ、定価1680円[税込])。
ベルクはJR新宿駅ビル地下のたった15坪のビア&カフェ。日商60万円を稼ぐセルフスタイル、立ち飲みと椅子席半々のお店。開店から20年、試行錯誤の連続による、井野氏の芸術的とも感じれる店舗運営に驚嘆します。薄利多売ですが、職人とのネットワークのよる徹底的な商品開発、味には過剰にこだわった商品力が最大のウリであり、笑顔こそも商品の一部にしてしまう自然な接客に、ファンが朝に夜に訪れるというから凄いの一語です。
この店の合言葉になっていることが2点あります。その一つは
「どこにも真似できない」
ということ。他店との相対的比較ではなく、絶対的な位置を確保することに心血を注いでいます。
さらにもう一つが
「長期熟成」
によるお店づくり。短期で結果を出そうとする大手チェーンとは違って、「店全体に対して神経をはりめぐらせ、小まわりを利かせ」、「仕事がライフワークと呼べる個人経営」をじっくりと寝かせて味を出していくことが経営者の哲学になっています。
しかし、このベルグが駅ビルからの立ち退き勧告を受けています。「流行に応じて、毎年館内の2割の店を入れ替える」方針を貫徹しようとしています。逆に、ベルグのお客様が反対署名を集め、個人店支援の方向を示しています。
商店街も空き店舗が出るとチェーン店が入店する昨今。多様性を失うと地球上の生物の存続も危ぶまれることが分かってきているんだから、その仕事に使命を持って、他では真似のできないような店舗運営に励んでいる個人店の時代になってほしいと考えます。井戸書店もその中の一店になることを目指します。