事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

ザ・シューター / 極大射程

2007-06-13 | 洋画

Shooter01  日本が今どこかの国と交戦状態にあるとしたら、製作される映画がその影響を受けないはずはない。支持するにしろ、反戦をとなえるにしろ。

 全世界に自国の文化を、商売という形で(だから強い)伝播させるアメリカにしたって同じことだ。誰がどう考えても泥沼になることが自明だったイラクに、ネオコンどもが意地を張った結果が現在の苦況。あのブッシュジュニアの支持率が急降下し、政権が完全に死に体になっているのはめでたいにしろ、しかしやはり交戦中である事実は動かない。その事実が「ザ・シューター / 極大射程」にどう影響しているかというと……

 終盤、悪役のネッド・ビーティ(なつかしー)が

「イラクに攻め込んだのが石油のためじゃない、って信じるヤツは誰もおらんだろ?」

と開きなおる。
このセリフだけをとりあげればアンチネオコンな映画なのかな、と思えるけれど話はそう簡単じゃない。スティーブン・ハンターの原作(新潮文庫)を読んだときにはさほど気にならなかった『復讐の完遂』がどうにもすっきりしない。自分をはめた権力者たちを、驚異的な狙撃能力で始末していく過程は確かにすごい。でも、主人公に迷いがなさすぎる。これが交戦中の映画でなかったら、主人公の煩悶やすべてを終えたあとの虚しさ、なんてお約束のシーンがあるだろうけれど、そんなもんはかけらも無し。やられた分はきっちり仕返ししてハイおしまい。これじゃなあ。

Shooter02  同じパラマウントが製作している、同様に超有名なミステリの映画化、ジェイソン・ボーンシリーズとの差は、自分の行為への迷いや反省があるかないかだろう。「ボーン・スプレマシー」のラストで、ボーンがなぜロシアに行かなければならなかったかで観客をうならせた、あの叙情がほしかった。

 まあ、無いものねだりはともかく、日用品だけを使って自分を治療したり(クルマの部品で点滴までやっちゃう)、爆弾をつくったりのディテールはわくわくさせる。

「1㎞先の標的に命中させるには、地球の自転まで計算に入れる必要がある」

こんなセリフもさすが。でも言っているのが猿顔マーク・ウォールバーグだからなあ。「ゴルゴ13」に熱中する狙撃手好きの国民としては、もうちょっと陰のある、キアヌ・リーヴスあたりに(最初はその予定だったらしい)やってほしかった気も。

 中盤に、銃のことなら何でも知っているという痩せこけた老人が出てくる。え?これがザ・バンドのレヴォン・ヘルムなの?うっわーオレも歳をとるわけだよなー。

コメント
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