PART1はこちら。
海水浴のシーンがある。波打ち際で大喜びする子どもたち。砂浜で、おばあちゃん(樹木希林)とおかあさん(安藤サクラ)が語り合う。
「よく見ると、あなたの顔ってきれいね」
照れる安藤サクラ。ちょっとすねたような演技は確かにこれまで彼女が得意中の得意にしていたものだ。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」のカヨや、「愛と誠」のガムコがそのまま海岸にいるみたい。
実はこのシーンはいちばん最初に撮られたもの。まだストーリーもかたまっていない状態で、まずキャストを集めてとりあえず撮るあたりは是枝裕和らしい。
しかしここから観客は
「あれ?この家族ってどこか変だ」
と気づくことになる。セリフの端々や役者たちのからみから、作者の企みを観客の側が積極的に読み解いていく展開に。重要なセリフは松岡茉優がリリー・フランキーに
「あんたたち、いつ(セックス)してるの?」
そして実際にそのからみが、まさか素麺やネギを使って描かれるとは。テーブルのすみに垂れ下がった素麺がまるで……いやいや考えすぎですが。
「もし私たちがこれから撮る映画の中であの泣き方をしたら、安藤サクラの真似をしたと思ってください」
これはカンヌの審査委員長だったケイト・ブランシェットが語ったこと。さすが名女優。わたしはあの場面で激しく感動した。役が憑依したとしか思えない瞬間。「かぞくのくに」のリエが、スーツケースを転がして去った次の展開がこの物語のはじまりだったと言われてもわたしは納得する。偉大なる女優の出現です。
ドキュメンタリー的な撮り方云々で語られることが多い是枝裕和。「ワンダフルライフ」(見てね!)はそれで成功したのだし。しかしここ数作は誰よりも豪華なキャストをそろえ、まるで往時の松竹人情譚を独特のスタイルで撮っている。つぎはカトリーヌ・ドヌーブで新作?うわあ期待しちゃうな。
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