養護施設で育ったケンタとジュン。あこがれの存在だったはずのケンタの兄(宮崎将……あおいのお兄さんです)は、幼女にいたずらをしたとして逮捕される。
出所した彼は、もとの職場である解体屋にもどるが、先輩であるユウヤ(新井浩文!)に「ロリコンはクビ!」と宣され、激昂した彼はカッターナイフでめった切りにする……
時は流れ、ケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、ユウヤの下で解体に明け暮れている。「はつり」と呼ばれる電動ブレイカーで壁を打ち砕く作業。傷だらけのユウヤはケンタから“賠償金”と称して金をまきあげ、日々いじめている。ブレイカーのせいで、ジュンは緊張すると手が白くなる症状が出るようになっている。そしてある日。
……もう、どうあってもこのドツボから抜け出せないのかと絶望するケンタとジュン。そのふたりにまとわりつく「ブス」で「バカ」で「ワキガ」なカヨちゃん(安藤サクラ)。
おそらくは誰一人彼らの旅の目的である『網走にいる兄に会う』ことに希望なんてないと気づいている。でも、そんなふりをつづけることでしか日々を過ごせないのだ。
そんな彼らに「若いんだからがんばれ」とか「希望を持て」と声をかけることがいかに無神経で虚しいか。彼らはお互いを傷つけ、じゃれ合うことでしか存在を示すことができない。
施設の仲間だった洋輔(柄本佑)は、母親の虐待のせいで片目を失っているが、その母親(洞口依子!)に向かって
「おれたちの方がよっぽど洋輔のことが好きだぜ!」
と投げつける罵倒は、むしろ彼らの狭い世界を象徴していてつらい。その絶望を、ジュンの白い手が象徴する。
アメリカンニューシネマの匂いがプンプンする。しかしそれは一種の祝祭だった「明日に向かって撃て!」や「俺たちに明日はない」ではなく、「バニシング・ポイント」や「グライド・イン・ブルー」のテイスト。ブッチとサンダンスではなく、ボニーとクライドでもなく、彼らの死はあくまで孤独だ。
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