事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「20世紀少年」 浦沢直樹著

2008-07-20 | アニメ・コミック・ゲーム

20th02 どう考えても単行本を買わせるようにできている。ストーリーの面白さに一気読み。“ともだち”の正体を知ってから再読。しかしその正体が“あいつ”でほんとうにいいのかともう一回。計3回は読まなければならないように周到につくってあるのだ。

何を語るか、はともかく、どう語るかという点で浦沢直樹は文句なく現代最高の漫画家。来週まで待ちきれない!このイライラをどうしてくれる!と読者をいらつかせ、だから結果的にわたしのような人間は完結まで待ってから読むことになった。われながら我慢強い。

しかしこのシリーズを、途中でギブアップしていたのには理由がある。「ともだち」に熱狂する、無邪気に微笑む信者たちの描き方があまりにリアルなので、読み続けるのがしんどくもあったのだ。これまた、さすが浦沢というべきか。

1960年早生まれの人間であるわたしにとって、ケンヂやオッチョなどの登場人物はまさしく同級生。’70年の大阪万博に行った人間の優越感も、行けなかった人間の悔しさもよく理解できる(わたしはもちろん行けなかった方)。オトナならそんなことに拘泥するのは馬鹿馬鹿しい話だが、こどもにとっては一生を左右する一大事であり、世界を滅亡させる動機にもなりうることも納得できてしまう。

万博だけでなく、アポロの月面着陸(月に降り立ったアームストロングではなく、周回していたコリンズをとりあげたのはうまい)、平凡パンチ、スプーン曲げ(これはちょっと時代が違うのを強引にひっぱっている)などの60年代末~70年代初めの地点と、オウムを経過した世紀末を往復する設定はうなるほどうまい。夢見た世界が、科学を修得した人間たちによって歪められていく失望は、わたしたちの世代でなくても共有できる部分だろう。

そして、宗教によってだますなら、スマートにだますのならまだしも、ずさんで、滑稽なままでもわたしたちは十分にだまされてしまう苦みが、あの奇怪で醜悪なロボットに象徴されている。

さて、8年間にわたって連載された長大な原作がこれから映画化される。「Death Note」と同じようにしんどい作業になるだろう。ともだちの正体をめぐる二転三転を、原作を読んでいる人間と、まだ世界観すら把握していない観客の両者に説明しなければならないのだから。“ともだち”のケンヂに対する強烈な愛憎を画面に表さなければならないのだ。どうする東宝。どうする堤幸彦。さぁーてキャスティングをチェックすると……おっとぉ!あいつが“ともだち”かぁ!

映画版の特集はこちら

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